第4話! お昼のお弁当タイム
昼休みのベルが鳴った。
ハガネたちの通う私立志命堂学院では始業、終業の合図は全てチャイムではなくベルだ。
キーンコーンカーンコーン♪
のチャイムではなく、
ジリリリリリリリリリリリッ!
のベルなのだ。
退屈な午前中の授業が終わって、みんなのお楽しみの時間だ。
「よぉー、高野ぉ、昼メシ食おーぜぇ」
ちょっとチャラい男の子が高野チヨに声をかける。
彼の名前は十方ソウタ。ちょっとチャラく軽く見えるが、ごく普通の生徒だった。
いや、まぁハガネとチヨに比較すれば、全ては普通になってしまうのだけれど。
だが彼はある人物から目の敵にされていた。
「がうううううっ! こるぁあっ! まぁたチヨちゃんにちょっかい出そうとしてぇ! 油断も隙もない!」
チヨちゃんはアタシの物だ!と言わんばかりに後ろから抱きしめるのはもちろん金剛ハガネである。
「いや、ちょっかいって、お昼食べようって言っただけじゃないかぁ」
「そんなの、信用、出来ないっ! 信用、出来ないっ!」
「なんでだよ! なんで二回言うんだよ!」
「信用出来ないから!」
「3回言った!」
「あのねぇ、ハガネちゃん、ソウタは一緒にお昼を食べようって言っただけだよ?」
「うん、そうだね♪ 一緒に食べよ♪」
「俺の時と反応違くない?」
「あー、もうそのやりとり、いい加減飽きない?」
前の席から机を寄せてきて蓬莱クスミは呆れていた。
「飽きる飽きないじゃないの! この十方ソウタが油断ならないのよ!」
「はいはい、どうどう……お弁当出すね」
「わーい♪ ねえねえチヨちゃん♪ 今日は何弁当なのかなぁ♪ わくわく♪ わくわく♪」
「はい! チキン南蛮弁当だよっ♪」
「やったー! チヨちゃんのチキン南蛮だーい好きぃ♪」
「おー美味そう♪」
「むっ! ソウタにはあげないんだから! あ、あげてあるけど!」
「いや、ハガネちゃん、無理してなにかうまいこと言おうとしなくていいから……」
「べ、別に欲しくねーし! ちょっと見ただけだし!」
「なによそのわかりやすいツンデレは?」
そう言ってクスミは自分のお弁当を開ける。
「しゃーねえ、ボス、こっちで席借りて喰おーぜぇ」
ソウタはとても大柄な生徒を呼んで、チヨの机を借りて前後で挟む。
ボスはそのあだ名に相応しい巨体を持ちながら、とんでもなく無口で限りなく存在感が薄い。
体躯だけでなく顔には深い傷を持ち、学生とは思えない威厳と貫禄を備えているのだ。
このボスとチヨとソウタとで、外見と中身が一致しない三人組みとして、学内で有名だったりする。
女の子だと思ったら男の娘なチヨ。
チャラいと思ったら普通にマジメなソウタ。
強面巨漢で怖い人と思ったら、気弱な性格のボス。
チヨのクラスでよく話をする親友といっていい。
ボスはその体格には似合わないちまっとした可愛いお弁当箱を持って、チヨの前の席から机を借りる。
その席の子は食堂に食べに行っているのでいつも借りているのだった。
さて、こうしてランチが始まったわけだが。
机は四つ、人数は5人。
ハガネの向かいにクスミが座り、クスミの隣りにボスが座り、ボスの向かいにソウタが座る。
さて、ここで問題。
チヨはどこに座るのでしょうか?
答え。
「はい、チヨちゃんこっち来て♪」
とハガネは自分の膝の上をポンポンと叩く。
「はいはい」
とまたチヨもなんの躊躇もなくその上に座る。
そして二人してチヨちゃんお手製のチキン南蛮弁当を食べるのだ。
このクラスではすっかり見慣れた光景であった。
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