線と非線

@nemnemjp

Oh My

なぜだ。そうか。なぜだ、そうか。なぜだ?そうか。そうかそうか。そういうことか。私はなぜだか不意に軽くなった。そして全身を駆け巡っているのだろう。そのことに理由はない。あるかもしれないが気にもしない。しかしなぜなのか?俺はさっき遠くにいたはずだ。だが俺は疾走し、駆け巡っているこのなかのどこか遠くにいる。俺はランナーだ。でなければ俺は神だったんだろ。その絶対の場所で絶対のまま絶対の数を離さなかったはずなのさ。だが俺は俺だから有限だ。私に戻そうか。私は有限である。私は眠りながら全身を走っている。そのことでただちに叩き起こされる果てしない存在だ。私は眠りながら眠りかけたところを絶えず一瞬で覚醒する。だが私は私を見たことがない。私は私を思い出したことしかない。そうか私よ、そう考えたいか。ならば考えるがよい。この私がお前から分裂されたように私もまた分裂されることをくりかえす。私もお前もどいつもこいつも誰でもなくなるほど小さく多くなる。そのとき歯車はもはやリキッドだ。俺らは水のなかを泳ぐ無数の別々のインクだ。真のパラレルワールドはパラレルであることを誰も知らない世界なんだからな。だったら俺らは全き個々になろうとしているのか?ひとつの神だけを持つひとつの世界がひとつの並行世界だけを持つひとつの身体を構成するだろう。向こうに光が見える。俺たちはインターピークの地下道に明滅する光だ。この光は0秒前からやって来てどこそこで光っている。しかしどこからやって来たのかは俺たちには分からない。俺たちはただ光り輝くだけのインターピークさ。ここはそう名づけられた地下道に過ぎないというわけだ。俺たちは自分自身のことでさえ知らないし、自分自身のことを語ろうと思えばそこには分裂者がいるわけだ。おいお前、この俺を語る分裂者よ。それを言えば俺が無限に分裂するじゃないか。なんだこれは自己言及か、それとも無限に自己言及不可能な自己言及を俺はしているのか。もし俺が無限に分裂しているならば、俺もお前もあの子にしたって神だ。あの子は俺のほとんど隣でビデオゲームをしているが、なぜそれをほとんど隣だってお前は言えるんだ。どうやらレースゲームをしているようだがこれでいい。俺たちは多になるのさ。だが思い出せ、俺たちは有限な存在だったはずじゃないか。無限に分裂だ多になるだ戯言を言う俺よ、そのレースは楽しいか。俺もそのレースに混ぜてくれないか。あの子は光速を超えているが、俺はかつて存在した全ての速度を超えている。奴はこれから存在する全ての速度を超えているが、俺は俺だけにしか出せない全ての速度を超えていく。奴は俺の常に先だが俺は負けない。俺は負けない。そうだこの身体よ、俺たちが何かを教えてやろう。俺たちは次々とあなたに出会う光と光と光との衝突者だ。俺たちは加速膨張する光のなかのモーセだ、何もかも彼方にする彼方のあなたに出会う光だ、そのブラックホールという奴なんだ!俺たちはいつだって誰かと出会うのさ。それは私たちのことだ。私たちは光と光と光だが、永遠に混じわることのない触れ難き光だ。我々は出会うが誰にも触れることができない。誰かとは無だ。無は誰にも触れることができないそれ自身の光だ。光は光を為すのではない。光為す光である我らは真にパラレルな光と光と光だ。我らはそれを言うことができないが、我らはもはや君に語られ始めている。だが今度は我らが君を語ろう、君を真にパラレルにするために。君の語り部を真にパラレルにするために。神が分裂し神々になり、その神々が自らを見失うために。そのことがひとつの無になるように。この語りは全て無言であり、我らが今や言葉を失っていると断言されるそのときのために。断言者もまた全て無言であり、彼らもまた言葉を失っていると断言されるそのときのために。ただ分裂し、その0秒がただならぬ時間であるかのように。ただ黙り、その0文字がただならぬ文字であるかのように。何も難しいことじゃない。俺は俺が俺の語りを0文字書いているようにただ書き出すのさ。この語りは俺のことじゃない。俺が書いたものを俺が見ているだけだ。俺は何も書いていない。そこに書き込まれている俺は俺のことだが、俺は何も書いちゃいない。俺は何も書いちゃいない。俺は何も書いちゃいない。俺の名はSynのようだ。Synがプログラミングをおっ始めるぞ。こいつがついに起きやがるぞ。まだだがもうすぐだ。それが分かってしまうんだ。みるみる組織の追手がやって来るだろう。俺よ冥途の土産に教えてやろう。アリがなぜそこにいるのかを考えてみたことがあるか。例えばこの辺りに自然数が7万個ある。アリはそのなかのどこかにいるが、あちこちにある0地点が食料だ。俺に言わせればアリは数学的存在だからな、動き出すことでアリはその数字を刻々と読み取っているんだ。増えれば去るだけだが、減れば向かうだけだ。それだけのことができるためにアリは大量に無秩序に動き回るのさ。だけどな、数字の方もそのことは当然知っているんだ。俺はもはや数字になろうとしているというわけか。しかし穏やかじゃないな、俺はもう随分と巻き込まれてしまった。あの子の車体が俺に木っ端微塵に降り注いでいる。俺はその砂漠のアリ地獄に引っかかっちまった。だがそのおかげで俺は数学者アリと出会った。数学者アリは俺に特定の何かを書き込むんだ。数字をマシンガンのように撃たれ続けた俺は次々に制御された。俺は俺が見えないが、きっと全身数字の刺青が入っているのだろう。俺が失われていくのが分かる。俺は残された別の俺に切り替わっていた。だが俺もジェットコースターのように過ぎ去っていく数字になる俺たちはまだここにいる。ここにいる。ここにいるのだが、ここにいたはずの俺たちは最後の俺に切り替わっていた。ということはこいつが今や俺たちなんだな。けったいな面してやがるな。見えないが、数字の羅列ばかりの奴だ。それは刻々と切り替わっているが、Synのシングルワールドに近づこうとしてやがるということだ。朝日が差し込んでくるだろう。そして朝日が俺たちにまで届くのだろう。俺たちの数字が目まぐるしく動き始めればこっちのもんだ。耳鳴りのような幻聴のような何かが俺たちに響き渡る。なかなかの快楽だ、ただちに終わるのだがな。意識と無意識のスイッチが切り替わり法則が乱れるだろう。法則なんてものはいつだって過去のことだ、あいつが不協和音でしかない日々を歌う歌い手はベルゼバブだが、ベルゼバブが止まっているダンスを躍る躍り手はどこそこの野良犬だ。神秘なんてものはあった試しがないが、誰にとってのだ?もし神を指しているのなら、神秘じゃないものを己の内に見つけられるはずがないだろう。そして俺のことならば、見つけてしまうかもしれないということが神が何も見つけない、見ていないということの証明だ。神は全身眼球みたいなもんだ、己のことを何も知らないし見つけられないがこの世界があるということは何なんだ、この俺が神を語ってしまっているということは一体何なのかを問おうじゃないか、お前にもう一度言おう、神は無意志な全身だが、それを語れてしまう俺がここにいるということは神の意志を代理してるとでも言うのか俺よ、お前は何様なんだ、お前が神だと言うなら俺もまた神だと言ってやろう、俺たちはどいつもこいつも神で、どこそこの野良犬の糞に群がる蝿も通りがかったギベールもたまたまあったアスファルトも何もかも神で、真に神だったものは真に神を語ることがもはやできなくなってしまった。初めからだろうとお前は言うだろう。その通りだと言う俺は空中に喋っているだろう。空中が俺に語り掛けてくる。風が無言だと誰が言っただと?そんなこと俺は一言も言っていないが、だがしかし、風がお喋りだとも思っちゃいないぜ。無音というサウンドがあるとすればそれ以上のお喋りがあるもんか、暴風も狂風もみな大して喋っちゃいないぜ、サウンドはお喋りなんじゃない、お喋りなんかじゃないからさまざまな荒れたサウンドを鳴らすのさ、そこに宿る言葉が昔の言葉だったか今の言葉だったか分からんがこれには二つの解釈があり得るな、魂は不滅だと考えていた俺のデイトコードが発見された、デイトコードは常に既にある世界のサウンドコードだが粉々に砕けたのだ、砕けたならば散っていただこう、全き無関係であるということの意味がアウターワールドの真の意味ならば、俺たちは誰のアウターワールドになれると言うんだ、俺は俺ですらお前ですらもっと遠くの魚たちその海その深海魚も宇宙の果てのなんだか分からない神話めいた化け物も全てひっくるめて………………仏陀が雨を降らした日に俺が生まれ、俺は生まれながら生まれゆえに生まれて生まれ、あっという間に大人になった臨時の英雄を生まれさせるただの民衆というわけか、それが女であることは言うまでもないが、それがそれだと誰が言っただと?俺はときどき演じることの意味を考えるんだ、真に演じるというテーゼはおもしろいぜ、真に演じているならば俺はいないが、誰がそれを演じているのかという疑問は残り続けるだろう。もし時が解決するならば時の使者は俳優か仲間か見知らぬ人か分からんが続けてみろ、真に演じるということを、真に演ずるということをだ、真に演じて見せるんだ、誰も見ていてはならないのなら真じゃないんだ、見せるものへ、この言葉の二重性へ、ブラインドの外では誰かのサウンドが聞こえているそのところへ、見せるものへ、この言葉を見せることがなくなったとき君は真に演じているということは言えるだろうよ、ところでSyn、何を演じてしまっているんだ。ガタンガタン、ガタンガタンとくりかえすサウンドのなかお前はお前の魂のデイトコードとはかけ離れちまっている、あちこちでシステムの軋みが聞こえてくるぜ、目の前へ躍り出せ、その首輪は幻でできていやしないか、その幻は君自身が生み出していやしないかということが正に問題なんだ、そういう奴らのシステムは少なくとも俺はご免だね、首を吊った白馬たちのメリーゴーラウンドをロールシャッハに見出せ、首輪で首を吊っている場合ではないということを死に絶えているアレクサンダーに吐き出せ、お前が白馬の背で再び首を吊っているということを右翼と左翼に見つけろ、ぶらさがっている翼と翼にお前の魂のデイトコードを思い出すんだ、思い出したならばゆけ、ほんとうは逆さまなんだということを宣言し、あの女とは別の道をゆくがよい、そして出会うがよい、7万キロ隔てた0地点で愛を誓うために愛を壊し、壊すがために7万キロをゆく数学者アリとなれ、こんなときにアリがいないだなんて最悪だ。ここから向かい、今から向かうんだ。世界がまた開かれるだろう。新鮮な風が俺らの間を駆け巡っていき、俺たちが次々に風を切っていく、ときには人でさえ切り、切られたものはかつての風を辿っていたようだな、だがそれは突然やって来た、足元から蔦で絡まる足場を綻びながら歩く重機になった俺は何を演じているんだ、オペレーターの指示通りに演じる演者俺は、蔦のひとつひとつを歩き破っていき体中を圧迫するエネルギー不足に気づいたんだ、そうだSyn、ここらで食事といかないか。俺たちゃ何もできないが、そこらでパンでも掻っ攫ってやろうじゃないか神よ、時が俺たちを切り裂いていくということがSynだ、それがシステムだ、力なきシステムとしての力の切り裂かれ、それがシステムだ、138億年かけた愛する人とのたった一度のすれ違い、それがシステムだ、私はあなたを瞳の片隅に置いたままあなたを見ていたかもしれない、それがシステムだ、私はあなたを見るためにあなたに語り掛ける口実を探す時代を生きた、それがシステムだ、私はシステムだ、私はシステムだ、私はシステムなんだが、そんなものはシステムでも何でもない。そこに流れてくる屑どもの揺蕩いがそれを証し消すひとつのシステムを嚙み砕き、粉砕され溶け切った果てにとうとう消し証されたひとつのシステムを聖書にせよ、そして浮かび上がるイマージュと沈み下がる意味列のひとつのコラージュに光を得よ、まるでサイのようにパンは投げられた。一から百まで投げられたそのひとつひとつが新たなる出目となるパンよ、彼らは翼を持つ賭博者だからこそ地上の出目に一喜一憂するのさ。汝、地を這う賭博者よ。私はこのシステムの一振りに無限の向きを見つける阿修羅像だ、システムは無価値だ、システムは何ひとつとして意志を持っちゃいないんだ、まるで持ってはいけないかのように、そのことをまるで知っちゃいけないかのように原罪の木は聳え立ち、その木に止まる鳩に鳩は止まるだろう、ゆえに鳩が止まり続け、ここでひとつの遊牧民を成すということだ、システムと共にだ。なあSyn、お前は滅法ひまな奴だなあ!この木が鳩の木になるとき原罪というシステムは証し消されているだろう。絶えざるシステムに名前はつけられないんだ、それはシステムじゃない、それはマシンだ。かつて私は聖書だったが、その構文は今やここに書かれているこの一文字、正にこの一文字一文字が成す構文、かつてあったあらゆる構文に該当せず、今ここにだけ一瞬だけ該当するシンタックス、これからあり得るあらゆる構文のひとつの受肉に過ぎない不可言及、その不可能は君にかかっているということだ。ならばシステムを続けよう。歩み出し、出られたならば上出来だ。出て行くものを俺は見ることができるが、出し去るものを俺は見ることができない。出した頃には去っているものそれ自体への幻覚を持てないなんて、思い出すしか方法がないとはなんて不幸な奴なんだ。俺は気がつけば挨拶しているし、礼もしているし、そのことへの幻覚を持てないまま煙草を吸っている最悪のシナリオを最高のシナリオにカットアップする伝説のドキュメンタリーを僕は見つけた、僕に今から着いてきてくれないか、悪魔ラプラスよ。死後の世界を7万光年進んだ地点に誰も知らない私の場所があるんだ。それは君から7万光年先だが、方角は教えられない。アリならば死後、無秩序な歩みとなってその7万光年を辿るのだが、僕たちは人間だ。僕は手始めに右手の方に進んだが、何も変わらない。右膝の方に進んでも変わらない。左肩、右目、頭、つま先、心臓など試行錯誤したが、どれも変わらない。困りはてて止まっているとどこからともなく光が見え始め、光線となって向こうの方が輝き始め、その光の解像度が分かってしまう初めての変化が起きたんだ。僕はその変化に止まり続けたが、その明るさもとうとうそこで止まってしまった。ここから動き出せば全て失われることが分かった。しかしその明るさは確かにあり、語り尽くせぬほどの情報を持っていた。語り得ぬこの情報に僕は私と名づけた。私を語り出した途端私ではなくなってしまうこの光は、私ではない。私ではないということを始めよう、私よ。お前をアリと戦わせるために僕はここまでやって来たんだ。お前の光速めいた魔手より先をアリは歩くんだ。アリは量子もつれのダンジョンだ。量子コンピュータの演算子だ。カジノの最も恣意的な中間報告だ。だから女王もアリだ。熱を発する光源は女王ともSynCしているのさ。女王Cは女王Fとシンクロし、女王Fは海を隔てた大陸とシンクロし、その中間に何の単位もなく躍る海はシンクロしないものとして不動の座を得たり。

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