残り火

詩川貴彦

第1話 あのころ

「あのころ」


春が待ち遠しかった

君と

桜の道を歩くのが好きだった


春が待ち遠しかった

君と

緑の雨にぬれるのが楽しかった


五月の旅がささやいていた

初夏の木漏れ日の中で

いつまでも語り合った


あのころの僕たちは

誰よりも

輝いていたと思う


ほら

思い出がこんなにあふれるから



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