回り回って何があったのか、今俺は職場のBARにメンバーと出勤している。


碧がBARタイムの雰囲気を見てみたいと言った所から、悠が飲みに行きたいと零し、隼人がお詫びに奢ってあげろうんぬんかんぬんからこの流れになったのだろう。


碧と隼人はまだ未成年という事もあり、連れてくるのは気が引けたが、ソフトドリンクでも飲ませておけば大丈夫だろうと安心していた。


だが飲む気満々だった俺に、葉月が険しい顔で近づいて来て、人が足りないからと俺が出勤する羽目になってしまった。


こうして現在、バーカンを挟んでメンバーと話をしている。


隣の葉月が溜息をつきながら零した。


「やっぱり言ったじゃないですか、ろくな目に遭わないって。メンバーさんがいて良かったですね」


「いや本当に助かったよ、みんなごめん、葉月も迷惑かけてごめんなさい」


俺がそう言って頭を下げると、葉月とメンバーたちは朗らかに笑った。


「相手が話のわかる素直な子でよかったよ、これからは気をつけようね」


悠はそう言ってニコニコ微笑んでいる。


「悠は甘いんだよ、二度とすんなくらい言わないとわかんないよこいつは」


「へぇ、隼人くん悠呼びになったんだ。いつの間に」


「今それはどうでもいいんだよ!」


ちょっかいをかけると、隼人は恥ずかしそうに俺を殴ってくる。


「それにしてもよくこんな簡単に収まりましたね」


隼人と俺の小突き合いを静かに見つめる葉月がそう呟く。


「てっきり店長の事だからこういう事いくつもあると思ったんですけど」


「やだなあ、そんな事しないって」


「誤解招くような事はしたんですよ、本当に反省してるんですか?この人」


「ねえ?めちゃくちゃ俺に厳しくない?」


俺が困ったようにそういうと、葉月は口元を抑えて笑った。


そんな時、スマホからピコン♫と通知音が鳴った。

仕事中とはいえほぼプライベートみたいなものなので、と心の中で言い訳し

こっそり画面を確認する。


「えっ」


思わず嗚咽とも取れる声が漏れ出す。


Twitterのメンション。心当たりがありそうでなさそうな女の子のアカウントから

「神楽玲音に弄ばれました」の文面とツーショットが載せられている。


俺が顔面蒼白で佇んでいるのに気がついたのか、メンバーたちがスマホを覗き込んでくる。


何故か、目の前の隼人から堪忍袋の緒が切れる音がした。また殴られるのにそれほど時間は要さなかった。


「こんの、バカ神楽!!!!」


綺麗な右ストレートと、一瞬の痛み。

倒れ込んだ後には、悠と碧と思わしき深いため息が聞こえた。


視界の端には呆れた顔でこちらを蔑む葉月。




神楽玲音と《Recollection》の平穏は、まだ遠い先の事のようだ。

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