いつまでも一緒に

宵闇(ヨイヤミ)

第1話

『 いつまでも一緒に 』


毎朝通勤で使う駅に行くまでの道で、何年もずっと見る二人がいる。いつも仲睦まじく、見ていて「羨ましい」と思うほどだ。

『太郎くん、今日は早く帰って来れるの?』

『うん。花子さんは?』

『私も今日は早く帰れると思う』

どうやらこの二人は、“太郎”と“花子”という名前らしい。何年も見ているのに、初めて名前を知った。まぁそれも当然か。逆に、ただ見かけるというだけの人の名前を知っていたら、それはストーカーのようなものだ。

『最近隣町で通り魔があったらしいから、気を付けてね』

花子はそう太郎に言った。太郎はきょとんとした後に『分かったよ。花子さんも気を付けてね』と言った。

そこから二人は別々の改札を通り、会社へと向かっていった。

そしてその夜だ。あるニュースが取り上げられていた。

『○○町で通り魔に襲われたとみられる男女二名が、先程搬送先の病院にて、死亡が確認されました。犯人は捕まっており、犯行が起きた○○町の隣町で起こった通り魔と同一人物とみて、聴取が行われています。』

テレビ画面に、死亡した二人の顔写真と名前が表示された。それは見慣れた顔と、やっと知った名前だった。何年も、毎朝顔を見てきた彼と彼女の顔を、声を、もう聞くことは出来ないらしい。

ただ、顔と名前を知っているというだけで、赤の他人である人の訃報を受け、目が熱くなり、頬を水分が伝う。悲しいという訳ではないはずなのに、それは止まらなかった。

あの世で、二人が再会し、また仲睦まじくしていてくれることを、僕は密かに願っている。

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いつまでも一緒に 宵闇(ヨイヤミ) @zero1121

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