第二章:竜騎士交友編
第6話 装甲科の風紀委員
平日、竜也達は今日も学校へと通学する。
「たっちゃんと学校、楽しいな~♪」
「恥ずかしい歌を歌わないでくれ」
「え~? 良いじゃん、気持ちには嘘は付けないよ~♪」
ジークリンデと腕を組んで登校する、竜也の元同級生にあたる基礎科の生徒達は彼に怨嗟の瞳を剥けるが逆にジークリンデに睨み返されて次々と校舎へと逃げるように走って行った。
「そこの幻想科の二人、基礎科の生徒を脅かさないで貰える?」
校門前で、イタリア人ハーフで金髪ロングのメガネっ娘風紀委員が登校しようとする竜也達へ警告する。
「何よ、装甲科の堅物メガネ! こっちは悪意を向けられたから自衛したの!」
「鉄鋼寺さん、俺らまだ何もしていないって」
竜也達は校門前に立ち止まり、堅物メガネこと
「そうね、まだだけどね? 岸野君は、転科したから元居た基礎科から嫉妬されてるのは聞いているし二人とも問題を起こさないように気を付けてよ?」
マルタが竜也達の言い分を、不服な顔で飲み込みつつ釘を刺す。
「私達に文句付けるより、自分達や超人科の悪を正しなさいよ~!」
ジークリンデが空を指さす。
空では超人科の巨大ヒーローな生徒が空を飛んで登校していた。
地上では装甲を纏い変身した姿で特殊バイクに乗って、校門へと突っ込もうとする生徒の姿が見えた。
「わかってます、さっきのは超人科の
マルタは何処からか金属製のベルトを取り出して腰に巻くと素早く超金属の装甲を纏った戦士へと変身した。
「
「げげっ! 今日は鉄鋼寺の当番だった!」
サンマルタが跳躍し、バイクに乗った高速先輩ことハイウェイダーへ向かい飛び蹴りをかました。
ハイウェイダーは吹き飛ばされ、彼のマシンは自動で停止した。
「ゼロハチイチロク、問題児確保っ!」
サンマルタが倒れたハイウェイダーを素早く取り押さえた後に彼のマシンを担いで校舎へと入って行った。
「堅物メガネも、大概ね」
「皆、力を持て余してるんだな」
竜也達はそんな騒動を見てから校門をくぐり教室を目指した。
幻想科の教室に入ると、今日は生徒の数が十人ほどと少なかった。
「ありゃ? いない面子は仕事かな?」
「かもね~? ところで、たっちゃんは何で堅物メガネと知り合いなの?」
ジークリンデが竜也に近づき尋ねてくる。
「彼女の家の
「ほほう? それだけ?」
「彼女は、俺の従兄弟の
ジークリンデに、自分が母の実家で見たマルタの印象を語る竜也。
「え? あの堅物が学君に、となると日独伊の三国同盟じゃん♪」
「確かにそうなるな、まあ義理の従姉妹になるかもだし仲良くしておこう」
「そ~ね、いずれ身内になるならそうする」
そう話を切り上げると、先生が来てHRが始まった。
「基礎科の事、まだ気にしてる?」
昼休み、ジークリンデが竜也に尋ねる。
「まあね、特に挨拶もぜず転科だったし」
弁当を食う手を止めて、答える竜也。
「う~、私が免許書き換え急かしたからだよね?」
学生の場合、ヒーロー免許の書き換えの情報は即日学校側に連絡が届き素早い処理が行なわれる。
椿原高校の場合は転科は転校ではないので、別れの挨拶をするなどのイベントがなく即座にクラス替えが発生するので生徒の気持ちの切り替えなどが無視される傾向にあった。
「俺が忙しくて、前のクラスの面子に挨拶とかしなかったのもあるから」
「うちの学校は、基礎科が一時的な場所って考え方を変えた方が良いと思う」
ジークリンデが自分の考えを述べる。
「まあ、中には大学から専攻を決めるって人もいるしね」
大学にもヒーロー科がある事を思いながら竜也が呟く。
「どうにか仲直りとかできたら良いよね、基礎科の校舎に行くの面倒だけど」
ジークリンデが微笑む、椿原の校舎は基礎科と装甲科が共同で一棟で超人科と幻想科がそれぞれ一棟ずつと敷地内で三つの建物に別れていた。
「本当にそれだよ、校舎同士が連絡通路で繋がってないし」
竜也がぼやくと、クラス委員の春小路が竜也達に近づいて話しかけて来た。
「昔はあったみたいだけど、能力も武装もない基礎科の生徒が他学科の生徒の能力で事故ったりとかあったらしいから無くしたって聞いたよ」
「花ちゃん、詳しいね」
ジークリンデが感心した。
「家は、お母さんも卒業生だから」
「そうなんだ、何か良いね親子で同じ学校行くとか」
春小路を花と名前呼びする程の友情を築いたジークリンデが微笑む。
「俺も、面倒くさがらず話して見るか」
そんな二人の様子を見て、竜也も以前の同級生と向き合おうと思った。
授業が終わり、竜也とジークリンデが校舎を出て帰ろうとすると朝に遭遇した基礎科の生徒達と遭遇した。
「げ、ドラゴン女だ!」
「こいつ実はヴィランじゃねえの?」
「やだやだ、そんな女に頼ってまで力が欲しいかねえ?」
竜也とジークリンデに悪態をつく三人のモブ。
「たっちゃん? あいつら友達?」
「俺の友達なら、俺の事を祝ってくれるから違うよ」
「そうよね~♪ じゃあ、遠慮なくシメちゃおっか晩御飯に♪」
ジークリンデが笑いながら怒り、右腕をドラゴンの物に変える。
「ああ、俺もリンちゃんを侮辱したり俺らに悪意を向ける奴は許せない」
左腕をドラゴンの物に変える竜也、モブ達を睨みつける。
「ひ、ひ~~っ!」
「う、嘘だろ変身しないでも力があるのかよ!」
「化け物だ、こいつら化け物だ!」
竜也達を舐めたモブ達がビビり出す。
「その腐った魂、掃除してやる!」
「ヒャッハ~♪ 晩御飯は、小悪党のソテーよ~♪」
竜也とジークリンデが体から闇のオーラを噴き出し、モブ達をビビらせる。
竜也達に地獄の悪魔、人を喰らう邪悪なドラゴンをモブ達は見て失禁し気絶した。
モブ達が気絶したのを確認すると、竜也達は元に戻った。
そして、スマホを取り出して失禁して気絶したモブ達の写真を撮りまくる。
「さて、こいつらどうする? 処す?」
「気分的には処したいけど、止めよう」
モブ達を懲らしめようとするジークリンデを竜也が止める。
「岸野君の言う事を聞きなさい、ファフナーさん?」
いつの間にか、風紀委員達を引き連れたマルタが現れた。
「げ、堅物メガネ!」
ジークリンデが嫌な顔をする。
「この様子だとあなた達に絡んで来た彼らが、懲らしめられたって所?」
風紀委員が現場の撮影をしている間に、マルタが何があったかを聞いてくる。
「懲らしめるまでは行ってないかな、その前段階でちょっと怒ったら失禁した」
マルタの質問に竜也が答える。
「……そうね、彼らに外傷はなしむしろ校内で失禁した彼らの方がお説教ね」
マルタが結論を出して、風紀委員達にモブの小悪党を引っ立てさせる。
「そ~ね~♪ 高校生にもなって、おもらしだもんね~♪」
ジークリンデが悪い笑顔をする。
「用件は済んだから、さっさと帰りなさい」
マルタが竜也達の下校を促した。
「うん、じゃ~ね~♪ まるちゃ~ん♪」
ジークリンデが一気に距離を詰めた呼び方をする。
「どっかの漫画みたいな呼び方しないで!」
叫びながらもマルタの顔は赤く染まりどこか嬉しそうだった。
モブの小悪党達は口々に自分達は悪くないと叫んだが、自分達が失禁している写真を見せられると黙り込んで説教部屋へと連行されていった。
その後、モブ達を学校や街で見た者はいなかったという。
帰り道、竜也がジークリンデに話しかける。
「リンちゃん、一気に鉄鋼寺さんと仲良くなったね」
「ま~ね、堅物ってわけでもなかったし義理の従姉妹候補だしね」
「まあ、その辺りは学にも頑張ってもらおう」
二人は仲良く下校した。
翌日の昼休み、竜也は一人で基礎科の教室に顔を出しに来た。
「あ、岸野君だ♪ 久しぶり~♪」
「本当だ♪ よ、出世頭っ♪」
「お前、もっと早くに顔出しに来いよ~♪」
竜也を見た基礎科の生徒達で、付き合いがあった者達が彼に近寄って来た。
「聞いて、聞いて♪ 私、最近魔法使えるようになったんだ♪」
「俺、金が溜まったから自家製のスーツ作ってるぜ♪」
「俺は、超人科の転科にトライしようと思ってる」
竜也のかつての級友たちも、それぞれ自分の新たな道を目指しているようだった。
「今度皆で遊びに行こうぜ、お前の彼女もいっしょにな♪」
友人の一人が遊びの提案をする。
「良いね♪ 私も岸野君の彼女見てみたい♪」
「君がそんなにモテる奴だったとは知らなかったぞ!」
「なあなあ♪ 俺にも誰か幻想科の女子、紹介してくれ猫耳の子とか♪」
「あ、ああ! リンちゃんも誘って、遊びに行こう♪」
「お~い、こいつ彼女の事リンちゃんって呼んでるぜ~♪」
「ひゅ~♪ ひゅ~♪」
「リア充め、羨ましいぞ~!」
基礎科の教室で旧友達とワイワイ騒ぎながら、竜也は昼食を取った。
こうして、竜也の中にあった基礎科への思い残しは解消されたのであった。
「良かった、たっちゃんが帰って来た~~♪」
教室へ戻って来た竜也にジークリンデが抱き着いた。
「いや、帰って来るでしょ? ここが今の俺のクラス何だし?」
「基礎科の友達、良い人だったんでしょ?」
「まあね、でもそれはそれで俺達はずっと一緒だろ?」
「当然、重いとかヤンデレとか言われても構わないし一生離さない!」
「あ~、自分でそう言う事言うなよ?」
「たっちゃんは、誰にも渡さないから!」
「俺も、リンちゃんを誰にも渡さないよ?」
自分の方もジークリンデを抱きしめなだめる竜也、そして昼休みが終わる。
午後の授業が終わり、竜也とジークリンデは腕を組みながら下校する。
「帰りにスーパー行こ、今日は私の家でお泊りだからね♪」
「……え、今日まだ平日なんだけど?」
「たっちゃんとお昼一緒に食べるの我慢したんだよ、私?」
「じゃあ、カレー作ってよ♪」
「任せて♪ お義母様にも連絡しなきゃ」
ジークリンデがスマホで姫子へ、竜也を自分の家で泊まらせると連絡する。
「母さんと、連絡先交換してたんだ?」
改めてもう外堀は埋まり、本丸も落ちているのだと竜也は実感した。
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