第5話 黙って頭を叩くなよ!痛いだろ!

「おう、ジュリにカイ……ト………は?居ねぇの?」

「あぁ、ギルマス。カイトなら不貞腐れて何処かに行ったぞ?」

「そ、そうか……って!違うだろ?!」

「いんじゃねぇの?別に……。行きたきゃ何処にでも行けばいいさっ。俺はもう知らん」

「ったくよ、お前少しはカイトに優しくしてやれよ…!」

「優しくねぇ……?」


 してたつもりだけどな……。

 カイト優先で物事を考えてたしね……多分な!


「まあ、仕方ねぇ……カイトはこっちで暫く預かる」 

「……そう?なら頼んだ」


 正直助かる……。


「お前…少しは慌てろよ?」

「慌ててどうするのさ?ああ暫く預かってくれるなら、当面のカイトの食費と諸々の金を……」


 懐から金が入った袋を出して、袋の中の半分をギルマスに手渡した。


「……っと、これで色々してやってよ?カイトに渡しても良いけど」

「お前……これいくら入ってる?」

「さぁ?適当に出してるからなぁ……分からん」

「……良いもう!こっちで数えて預かる。ええっと………………………で?全部で……お、おまえ!これ大金貨5枚分もあるじゃねぇかよ!」

「そう?でも足りないか?」

「……」

「い、痛っ!な、なんだよ頭叩くな!」


 ギルマスがジュリの頭を黙って叩く。


「ちげぇよ、ったくジュリ、お前……。カイト手放すのか?」

「……分からん」

「何故だ?」

「カイト次第だからね」

「……子供に決めさせるのか?」

「……酷だとは思うがな、そろそろ自分で決めても良いんじゃねぇの?」

「10才の子供にか?」

「そう、子供にだよ」

「……………仕方ねぇ……。カイトには、俺から話す」

「あぁ、そうしてくれよ。俺から話しても、不貞腐れて話しに為らないと思うからな」

「ったくよ、お前ら二人は世話掛けさせやがる」

「すまんて!それで、ポーション足りてる?」

「お前……そりゃ足りないがよ。なに売りてぇの」

「まぁね……?」

「なら、買ってやるから出せよ」

「フフフ、ギルマス。サンキューなら……」


 カチャカチャと音をさせて、ポーションの入った木箱を出した。


「……これどんだけあんだよ!」

「ハハハ。50本だね」

「50……ったく!」


 ギルマスが、箱から一本ひょいと持ち上げて瓶の中身を見定める……。


「はぁ、これ中級ポーションか?ジュリ…」

「そうだけど?」

「分かった、査定させてくるから待ってろ」

「了解。あぁ、それとこの町に空き地ある?」

「ん?土地か……」

「そう、土地。ギルドで管理してる土地」

「無くはないが?なにするんだ?」

「破格で譲ってよ家を建てたい。暫く俺がそこに住んで、ゆくゆくはカイトに渡したいからさ」

「お!おまえは!」 


 煩い!大声出すなよ!ギルマス。


「な、なに?大声出して」

「煩せぇ!土地なんてねえよ、有っても売らねえ!くそ!少しここで頭を冷やせ!ばか野郎」


 おや?怒って出ていったな……なに?

 俺が悪いのか?

 てか、俺は今夜の宿を決めたいんだが?

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