第19話 名乗らないギルマス

 カイトと、話し込んでいたら、どうやらここのギルマスが来た様で名前を呼ばれた。


「あ、御客様。ギルマスがお話を聞きたいそうです」

「え?ああ………そうでしたか?」


 カイトから少し離れて顔を上げ、ギルマスに挨拶をしようとカウンターに近付いたけど。

 いきなり、ギルドカードをご所望されましたよ。何故かな。


「君が、Aランクの冒険者かい?」


 声を掛けてきたのは事務系のギルマスさん。

 自己紹介は、無しなのね?

 目線が怪しい者を見る目だ!くそ!


「ええ?」

「悪いが、カードを見せて貰えるかい?ギルド協会に確認するから」


 失礼この上ないな……来る町間違えた?


「……どうぞ」


 差し出したカードを乱暴に受けとると、直ぐに後ろを向いてなにか?作業し始めた。


 ムゥ……………なんか本当に、感じ悪いぃぃぃ!


(兄ちゃん、押さえてよ!)

(おう……)


 俺の機嫌が悪くなりそうなのを察したカイトが

、俺に釘を指してくる。

 うん……出来た子です。


 そして暫く待たされて、足も疲れた頃にギルマスが俺に話し掛けてきた。


「……お待たせしました。さっ、少しお話しがありますので、奥の執務室に案内しますね?お連れのお子さんもご一緒にどうぞ」


 おお!掌を返しで……態度が……。

 ……お子さん?あ!カイトの事か。


 カイトと二人でギルマスの後に付いて行き、部屋に案内された。

 部屋に入ると、座ってくれとギルマスから進められたので素直に座る。


「さあ、どうぞ。座ってくれ。いま茶を用意させるから」

「あ!飲み物はいらないですよ?俺達の分はあるので。カイトこれ飲め。名前も知らない人から、出されたお茶なんて、飲んだら駄目だからな!」


 うん、教育に悪い。


「ありがとう。兄ちゃん」


 カイトが満面の笑みを浮かべて、俺の差し出したジュースの入ったペットボトルを受けとる。

 俺も、スポドリのペットを出して、これみよがしにギルマスの前で飲む。


「あ!も、申し訳ない。私はクルルス・マインドルと言う。ここのギルドの責任者だ」

「ふぅ~ん。で、なんですか?こんな部屋に俺達を連れ込んで?」

「………つ、連れ込む……。そういう訳ではないがね」

「なら、何ですか?俺は依頼を受けたい。それだけですよ?」

「君の情報を協会に問い合わせた。君は中々優秀な冒険者の様だが。受けてくれると言う依頼書は、中々難しい依頼だろ?」

「だから……?依頼を受ける手続してくれれば、その依頼の素材持ち込めるんですがね?手持ちに有るので」

「は~ぁ。……手持ちが有ると?」

「ええ、有りますよ?先ずオーガの睾丸に、眼球。それとオチュードマの魔石に、ブラックマウスの羽に、コカトリスの羽。ほら全部有る。この他にも魔物を買い取って欲しいのだけど?」


 それだけ言うと、鞄から素材をテーブルに全部出して見せる。


「………す、凄い。全部ある」

「だから……依頼達成でいいかな?良いなら報酬を欲しいんどけど?」

「も、申し訳なかった!疑ったり、無礼な態度を取って仕舞った。い、今報酬を用意するから待ってくれないか?」

「はぁ……。報酬が出るなら待ちますよ?」

「す、少しお待ち下さい」


 何故かな?焦って部屋を出ていったね?


「兄ちゃん何かしたの?」

「いや?なにもしてないぞ?」

「ふぅ~ん。あぁ、ジュース美味しい」

「だろ?変な茶を出されるよりは良いだろ?」


 しかし……なんだがドタバタしてない?

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