暗黒の人
バブみ道日丿宮組
お題:暗黒の話 制限時間:15分
暗黒の人
あいつは暗黒星雲の産まれだから。
そう彼女に言われたものだが、暗黒星雲っていうのがよくわからない。
実際にあるものらしきものだということはわかってるのだが、それが人の形を作るということはないであろうことはわかる。
「僕は人間だよ」
「知ってる」
彼女は即答し、作業に没頭する。
今彼女がやってることはとあるサーバーの復旧作業だ。3日前に動かなくなり、ファイルが破損したものを完全に復活させる。それが彼女に与えられた仕事だ。
それは天性の才能ともいえるだろう。
他のものには決してできない壊れたファイルの復元力。
彼女に限っていえば、それは壊れたものではなく、見づらくなったもの。ただ暗黒に包まれたものだということだ。
「飲み物いる?」
「ココア買ってきて。あと炭酸水」
「わかった」
彼女の嗜好品は炭酸ココア。僕も飲んだことはあるが、とても美味しいとは思えないものだった。けれど、彼女は好んでそれを飲む。
こういった大きな仕事中は必ずといっていいほど、口にする。
僕の仕事は彼女が雑念にとらわれないよう、周りから隔離すること。彼女は人見知りだから、僕以外の誰かがいると気が散って仕事にならない。
だから、この会社には今。僕と彼女の二人しかいない。
サーバーが死んでしまってるのだから、休む以外に方法はないしね。
「……」
僕が暗黒星雲というのは、おそらくサーバー以上に僕のことがわからないということをもしかしたら意味するのかもしれない。
彼女が接する僕は、僕であって僕じゃない。
自分でもそれはわかってる。
彼女の前の僕は、出来すぎてる。補助という概念を構築しすぎてる。
本来僕は彼女の人見知りと大差ないぐらいに人というのが苦手だ。それが彼女のためとなると、制限が解除される。
それは愛かもしれないし、友情かもしれないし、戒めかもしれない。
ただ……悪い気はしない。
一緒に入られるのならば、たとえ何を犠牲にしてでも二人でいたいと思ってしまう。
そう考えながら、コンビニまで足を運ぶと、新発売のココアがでてた。今日はこれにしよう。炭酸水はいつものもの。
あとは……チョコ菓子。
これで今日は乗り越えることができるはずだ。思考には甘いものが必要不可欠。ダイエット中だからという彼女には申し訳ないが、これが最大のバックアップなのだ。
そう言いくるめて、今日も過ごす。
暗黒の人 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます