かつての円周率

バブみ道日丿宮組

お題:恥ずかしい円周率 制限時間:15分


かつての円周率

「円周率はかつて3となってた頃があるんだ」

「そんな嘘ばっかいつもいってるけれど、もしかして私なら通じるって思ってる?」

「残念。今回はちゃんとした歴史のデータが残ってるんだ。ほら、これ見てみて」

「ほんとだ。短い期間3として教わった過去がある……のね」

「今は3.14に戻ったけどね。まぁ誤差の範囲に近いけれど」

「これってゆとり教育ってやつよね? ほんと酷い。円周率を3って答える親戚がいたら、真顔からしばらく戻りそうにないわね」

「ちなみにその年代に円周率を覚える親戚はいたの?」

「いないわ。ゆとり世代ってのも言葉だけ知ってるだけで、実際にどうなのかなんて知らないわ。今さっき円周率の違いを知ったぐらいだもの」

「なら、何も問題はないね。円周率は3.14。これが君の家に伝わる円周率の数値だ」

「安心したような、ひどくどうでもいいような気分だわ」

「まぁ円周率が3であると、3.14だろうと僕らには関係ないからね。なぜなら、3.14として覚えてるから」

「今更3になりますって言われても3.14で計算するでしょうね」

「記憶ってのはだいたいそんなものだよ」

「それはそうとして、私が取っておいたデザート食べたでしょ」

「3ぐらいね。もしかしたら3.14かもしれないけど」

「それが1でも0でも関係ないわ! 食べたってことでしょ!」

「まぁそうなるね。名前書いてなかったし、全部は食べてないよ。味見程度さ」

「そのドヤ顔が偉そうでムカつくわね。食べないでおいてっていったわよね?」

「さぁ? その時のことを覚えてないから、聞いたかはわからないよ」

「屁理屈ばっかいって、今度あなたの分は買ってこないから」

「それはひどくないか。君の選ぶお菓子はどれも絶品だ。僕だけ省かれるのはとても不名誉なことだ」

「だったら、外に出ればいいじゃない」

「開発がなかなか難航しててね。外の空気を吸う機会が減ってるんだ」

「開発してるのがなんなのか知らないけれど、投資が解除されないようにね」

「なーに。いざとなったら、君を頼るさ」

「ルームシェアはしてるけれど、養いはしないからね」

「大部分は僕が払ってるじゃないか」

「……そうね」

「まぁそれも僕が言い出しっぺだから話題に出すようなことでもないかな。君は君の仕事をすればいいさ」

「ほんと偉そうね」

「実際僕の開発がなければ、この国は少し進歩が遅れる」

「だったら、本気出してもらわなきゃね。買い物いってくるわ」

「デザートをよろしく頼むよ」

「覚えてたらね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

かつての円周率 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る