嘘
バブみ道日丿宮組
お題:暴かれた御曹司 制限時間:15分
嘘
「あいつお金持ちじゃなかったらしいぞ」
「へぇ……そうなんだ」
「なんだよ、興味なしか?」
はぁ……と一呼吸。
「他人の心配してる場合じゃないだろ。俺たちもそろそろバレる頃合いだぞ」
「大丈夫だろ。ただの友だちにしか見えないって」
そうだろうか?
手をつないだり、抱き合ったりはもはや友だちの範疇を超えてないか?
「セフセフな関係でいたいものだ」
「それは難しんじゃないかな? すぐに興奮しちゃうし」
その原因はきっと俺にあるのだろうが、つっこまない。つっこんだら、つっこむだけやられてしまうのが関の山だ。
「なんにしても御曹司でもなくなったあいつは、女子男子どちらからも距離をとられたよ」
「友だちでもなくなったって?」
御曹司でなくても友情は存在するだろう。
少なくとも俺はまだ友だちだと思ってるが、その出来上がった空気の中。仲よさげに話しかければ、関係性を疑われるだろう。
ガサツな女子高生が寂しそうな男子高生に声をかける。
全く笑えない冗談が生まれそうだ。
「それでその話題を俺にしてメリットがあるのか? お前と別れて付き合えってか?」
「そんなわけないじゃん。僕とだけ付き合って、むしろ他と会話しないで」
相変わらず気持ち悪いやつだな。
でも……悪い気はしない。胸の高まりはこいつからしか感じない。
「はぁ……どうしよ」
「ほんとはなにかあるのか? 逆にお前が付き合ってるとか?」
「そんなわけあるわけないでしょ。男同士でとかキモチワル」
俺も大概男っぽいのだが……まぁいいか。性別上は女であることに違いはない。
「じゃぁなんだよ」
「うーんと、うーん」
はっきりしないやつだな。
「ほら、いっちまえよ。すっきりするだろ」
「じゃぁ、いうけどさ。AV貸してるんだよね」
「……そうか」
どうでもいいようなことだった。
っていうか、俺というのがいながらエロ本に頼ってるのか?
「ち、違うから! 好きな女優さんだから!」
ファンみたいなものか。
「普通に返してもらえばいいじゃないか。それかもう一つ買うか」
「結構レアなやつなんだよ」
「じゃぁなんで貸したんだよ」
「会わせてくれるっていうから……」
ほんとしょうもないな。
「じゃぁ別れるか、俺と」
「なんでさ!?」
冗談、冗談と笑い合って、俺と一緒にAVの返却をしにいった御曹司だったやつの家はただのアパートだった。
嘘 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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