第88話 どーしても、どーしてもだ!!

「鱗の大きさ的には、体の曲げ伸ばしが激しい箇所が、より密度が高くなっているようですね。

 常時鱗が出ている箇所は、左即腹部から腰にかけて、その下もですよね?」

 そう言いながら、私の手は無意識に琉旺さんの履いている、スウェットのズボンをぐいぐい下げていた。


 どーしても、どこまで鱗が続いているのか見たかったのだ。

 どーしても、どーしてもだ!!

 しつこい様だが、もう一度言う。どーしてもだ!


「琉旺さん、どこまで鱗が出ているのか見たいです。

 ズボン、下ろして良いですか?」

「え………?脱ぐの?」

 そう聞きながら、自分の下半身を指さす。

 それに、鼻息を荒くしながら、大きく頷いた。


「そうです。鱗が出ているところまでで良いんで、脱いでください」

 そう言いながら、グイグイ引っ張る。

「ま………待て、陽菜子。ちょ、ちょっと、そこは……。

 オレ……、ココロノジュンビガ……」

 そう言われて、はっと琉旺さんを見ると、顔を赤くして、モジモジしている。


 そこで、ようやっと、現状自分がどんな行為を行なっているのかを、冷静に把握するに至った。

 鱗が少しでも至近距離で見たかった私は、半裸の琉旺さんの上に乗り上げて、ズボンをグイグイ下そうとしていたのだ。

 完全に、痴女である。お巡りさんがきたら、まず間違いなく連行の上、職質案件だ。

「署で、お話聞かせてもらえるかな〜?」というやつだ。

 

「ごmwん△□◎………!%@………、ごめんなさい………」

 琉旺さんには、大変申し訳ないが、やっとこ恥ずかしさを発動した私は、真っ赤になりながら、琉旺さんの上から飛びのこうとした。


 ところが、その私の腰を琉旺さんが、ガッと引き寄せた。

「ふぅーーーーーーーーーーーーっっっ………………………………」

 琉旺さんは、長く長く息を吐いた。


「待て……………………。

 ヨシ、心の準備は出来た。

 折角、陽菜子が積極的になってくれているんだ。

 俺もそれに応えよう!良いか?脱ぐぞ」

 なんだその、変わり身の早さは……。


「あ、いや、待たれよ……」

 なんか、変な口調になった……。

「その……脱いで、鱗見ただけで終わりますか?」

「う〜ん………、終わらないねぇ」

「私はですね、純粋に鱗を見たいだけであって、その他の行為については、また別の機会を、改めて設けて頂けるとありがたいんですが……」

 ニマニマ笑いながら、半裸の琉旺さんは私の頬を撫でる。


「無理だな。俺が脱いだら、もう抑えは効かない」

「………箍が外れちゃうってことですかね?」

「何を言ってる、箍どころか、そんなものは吹っ飛んで、桶だか樽だか知らんが、板はバラバラで全壊になるぞ。良いのか?」

「ひぇ……」

 バツーンと箍が弾け飛んで、円形に組まれていた板が、バランと音を立てて四方に崩壊する様を想像する。

 果たして、どの部分が箍で、どの部分が板なのかは分からないけど、私もそうなるのか?

 想像して、青くなった私の顔を覗き込んで、琉旺さんはククククと楽しそうに笑う。


「怖がるなよ。陽菜子が嫌がることは絶対にしないよ。

 そのうちに、俺のものにするのは決定だけど。

 でも、陽菜子が、良いよって言ってくれるまで、いくらでも待つよ。

 だから、また改めて別の機会を設けようか?

 この下の鱗を見るのは、その時で良い?」

 目の前の半裸のイケメンは、とろけるような笑顔で私を見つめて、そう聞いてくる。

「はい、是非、拝見させてください!」

 力一杯答えた私に、琉旺さんは、ブーッっと吹き出すと、私を腕の中に囲い込む。


「幾らでも。陽菜子が好きなだけ、一生を使って観察して」

「……はい。私の人生を賭して、観察することにします!」

 チュッと、唇と唇が合わさって、おでこをくっつけて至近距離で見る琉旺さんの金色の瞳が、キラキラ輝いている。


 優しく眉尻を下げて笑う琉旺さんのことを、こんなに愛おしいと思う日が来るとは思わなかったなと、心の中で呟きながら見つめた。

 早々に箍が外れてしまうといけないので、口には出さなかったけど。




_______________

これにて、「トカゲ姫と恐竜王子〜襖に 頭突っ込みそうなほど、愛しいです〜」完結です。

ここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。

始終、陽菜子さんのへんた……愛の発言が大半を占める物語でしたが、無事に完結してホッとしております。


この後は、番外編を投稿する予定です。

宜しければ、そちらもお読みくださると嬉しいです。



  静寂(しじま)

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