第62話 新しい扉を開く
この部屋は、琉旺さんやシュウちゃん達、竜家の力を削ぐ仕掛けがしてあるらしい。
先ほど、閉じ込められていた白い部屋と同じ仕組みなのだろう。
だから、竜家の強い力は使えない。
ところがだ、琉旺さんも、シュウちゃんも、そしてムウさんも、普通に強かったのだ。
これに焦れたリーダー格の男が、また応援を呼んでしまった。
部屋の扉を開けて、ワラワラと男達がやってきてしまう。
これほどの人数の男達を揃えて、一体何をしているのだろうか?
人様に言えないような怪しいことをしていると、公言しているようにしか見えない。
先ほどよりも、多い人数の男達は、皆、手練れらしい。琉旺さん達が苦戦している。
どうにか、3人が戦ってくれているけれど、無勢に多勢だ。どんどん、押されてしまう。
「陽菜子!」
琉旺さんが、鋭く私の名前を呼ぶ。男が、横から私に手を伸ばしてきた。
琉旺さんは、違う男の相手をしている。私のところには間に合わない……。
「ウギャー!!触るなァァ」
私は持っていた数珠を、反射的に振り回す。
バシン!!
私が振り回した数珠は、派手な音を立てて、男の頭にヒットした。
途端、数珠が熱く、重くなったような気がする。
「グゥッ……」
男は、呻き声をあげて倒れてしまった。
「あれ……?私、そんなに強くしたかな?
この人、大丈夫かな?」
心配になった私は、倒れた男を確認しようとしゃがみこむ。
「ねぇちゃん!その数珠、上に振り上げろ!!」
「へ?」
遼ちゃんに、言われて数珠を持った手を上に振り上げる。
ブンッ!
と、空気を切る音がして、振り上がった数珠は、
バシャーン
と、何かを打ち据えた。
また、私の手の中の数珠は、熱く重くなった。
数珠が当たったんだろう男は、顎を押さえると、ドスンと、その場に白目を剥いて倒れ込む。
「ヒィィッッッ!
………遼ちゃん、どうしよう?なんで皆んな、数珠が当たると倒れちゃうの?
何?この数珠……、呪いかなんか発動してんの?
ってか、数珠って振り回しても良いもんなの?」
涙目で、遼太を見ると、遼太の隣にいた三嶋さんが、顔を赤くしながら、すかさず手を振り回す仕草をする。
「陽菜子ちゃん、そんなん考えんの後でええから!
早よ、早よ!それで、やっつけてしもて〜!!」
男達は、こちらにジリジリ寄ってくる。もう嫌だ!!気持ち悪い!
そもそも、私は、男って生き物が地球上の生物の中で、かなり好きではない分類に入るのだ。
それなのに、この部屋には、その分類に属す生物がモリモリいる。
一体どこから、湧いて出てくるんだろう?
琉旺さん達だって、かなりの人数を床に沈めてるのに……。
「もう、こっちに来ないでよ!」
自棄になってきた私は、数珠をブンブン振り回す。
バチッ、バチッ、バチッ!
結構派手に音を立てて、数珠は男達に当たる。
当たったそばから、男達は倒れていく。
「イヤッホー!!イェェェイ〜」
三嶋さんのテンションが高い叫び声が、男が倒れる音と共に聞こえる。
完全に、目と肝の座った私は、数珠を振り回しながら、男達に向かっていく。
流石に、この時点で、この数珠で私にしばかれると、混沌して倒れると言うことが分かってきている男達は、ジリジリ後退りする。
鎖よろしく、数珠をブングリ、ブングリ回しながら男達の方に向かうと、彼らは青ざめて引き攣った顔をする。
『逃げんな!数珠の餌にでもしてくれるわ!!』
口に出す勇気のない私は、頭の中で叫んで、男どもを追いかけ回す。
一つ一つの珠の大きさは大きくはないけど、180珠もあるこの数珠は、結構な長さになる。それを振り回すのだから、当たる確率も高い。
『フハハハハハハ!!!滅びろ〜〜〜』
頭の中で、叫びながら男達を追いかける私の心の中は、スッキリ爽快だ。
こんな気持ちは、初めてだ。
トカゲちゃん以外にも、私をこんな気持ちにさせてくれる行為が、世の中にあったとは……驚きだ。
新しい何かに目覚めてしまったのかもしれない。
しかし、何事も図に乗るもんではない。
このまま逃げ惑っていてもやられるだけだと、腹を括った男が、体を低くして、数珠の攻撃を避けながら、私の方に突進してきたのだ。
あちらは、曲がりなりにもプロ。こちらは、ただの数珠を振り回す怪しい女子大生。
勝敗は火を見るよりも明らかである。
あちゃぁ……やられるな。子供の頃から、諦めるという感情を特に鍛えて育ってきた私は、さっさと覚悟を決めて、歯を食いしばった。
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