第4章 トカゲ姫 王子に口説かれる
第12話 もしかして……バックハグというやつじゃ?!
スマホを確認すると、遼ちゃんから鬼のようにLIMEが届いてる……。
あちゃぁ……、初めての無断外泊だからな。
早速電話したら、どこに居るんだと、めちゃくちゃ怒られた。
自分は、フラリとどこかに行ってしまって帰って来ないくせに、私が帰るのが遅いのに連絡がなかったりすると、小うるさく怒るんだ。
でも、心配をかけたことは分かっていたので、素直に謝った。
知り合いの家のトカゲちゃんの具合が悪いので、この連休中は泊めていただいて、様子を見るんだというと、ブツブツ文句を言いながらも、分かったと言って引き下がってくれた。
冷蔵庫の中のおかずを食べて良いからねと言って、電話を切る。
どちらにしろ、この連休は家で、勉強の合間に、トカゲ研究の論文を読み漁るつもりだった。
でも、私にとって、シュウちゃんと関わることの方が、遥かに有意義に決まってる。
驚くことに、この家には、爬虫類に関する大量の専門書だけでなく、生理学や薬理学などの書籍がわんさかあった。
家で勉強するよりも、ここにいた方が勉強が捗るかもしれない。
暫く、シュウちゃんのご飯は私が作ることになった。
術後の食事は、何を食べれば良いのか分からないと言われたからだ。
本来なら、専属の料理人がいるらしいんだけど、今は事情により人手が足らないらしい。
専属の料理人って、竜家どんだけ凄いんだ……。
「えっと、シュウちゃんって、本来は人型?なんですよね?
ってことは、昆虫食べたり、生肉食べたりしないですよね?」
一応、確認を取ると、オオトカゲはものすごく嫌そうな顔をした。
凄い!オオトカゲって、こんな表情もできるんだ。キラッキラした瞳で、シュウちゃんを見つめる。
「トカゲの姿でいる方が、治癒能力が高まるので、この姿でいますが、虫や生肉は食べません。
出来れば、人間の食すものでお願いします」
丁寧に、オオトカゲは頭を下げた。
グハァ!可愛いんだけど。
「分かりました。お任せください!」
私は、自信を持って請け負うと、キッチンを使わせてもらう。
ここのお屋敷のキッチンは、また、馬鹿みたいに広かった。
これは、人気のアイランドキッチンってやつかな?
ピカピカの天板に使い勝手のよさそうなシンク、背後のIHヒーターの上には、業務用のようなデカい換気扇がついている。
幾つか、扉や引き出しを開けて、何があるのか確認する。
何も心配いらなさそう……なぜなら、何もかも揃っているようだからだ。
料理は得意だ。横文字のお洒落なやつは作れないけど……。
私の作る料理は、おばあちゃん直伝の和食。
煮しめ、煮浸し、ひじき、焼き魚、辛子あえ、白和……。
華やかさには欠けるけど、遼ちゃんは、いつも美味しいって言って食べてくれる。
シュウちゃんに作る料理だって、それの応用。
病人食なんだから、薄味で、タンパク質が豊富で、血液をたくさん作ってくれるような内容にすれば良いんだ。
お出汁を取って、お塩を少々、熱いままタッパーに流し入れると、その中にささみを漬け込んで30分放置。
少しずつ熱が入って、お肉がとっても柔らかくなる。
ほうれん草の白和に、ひじきの煮物。
おジャコの炊き込みご飯に、豆腐とおなすの味噌汁。
煮物や、白和は多めに作って、冷蔵庫に保存。
デザートに、ヨーグルトを寒天で固めて、プルーンのソースをかけた寒天ゼリーを作る。
出来たささみを食べやすいように薄く切っていると、竜凪さんがやってくる。
「美味そう」
一切れ摘むと、ぽいっと口の中に入れる。
「つまみ食い、お行儀悪いですよ」
ちょっと、睨みつけてやると、後ろから覆い被さるように体をくっつけてくる。
背の高い彼が後ろから被さってくると、私はすっぽりと彼の体の中に入ってしまう。
彼の両腕は私のお腹に回って、ぎゅっと抱き寄せられる……。
私のうなじに顔を突っ込んで、スンスン匂いを嗅いでる……。
こ、こ、こ、これは、も、もしかして…………バックハグと言うやつじゃ?!
本好きな私は、なんでも貪るように読むので、ロマンス展開の知識も豊富だ!!任せておけ!
いや、いや、いや、竜凪さん、調子悪いのかも?
自分のロマンス菌に侵されつつある脳を、すぐさま否定する。その手の菌に、罹患したことのない私には、抗体がないのだ。
「あ……、りゅ、竜凪さん……。どうしましたか?調子悪いですか?」
吃りながら問いかけた私に、彼は、耳元で囁くように話しかけてくる。
「陽菜子………、琉旺だ。名前で呼んで。
ルゥでも良いよ?」
やめて!やめて!やめて!!耳元で壮絶に色っぽい声出さないで!!
心臓、バックンバックン言ってるから!!!
心筋梗塞、狭心症、心不全、大動脈解離………どれにしろ遼ちゃんを残して、死ねない!!
頭の中では、竜凪さんに文句を言っているのに、全く口をついて言葉が出てこない。
トカゲのことなら、あんなにベラベラ喋れるのに……。
「あ、え……リュ、竜凪さ……」
「ルゥ………ルゥだ。陽菜子……」
ヒィィィィィィ〜〜〜……誰か助けてぇ………。
私は、まな板の上にボタボタ鼻血を垂らして、その辺を血塗れにして倒れた。
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