対面空虚
佐藤 田楽
対面空虚
己を外から見たとき。
これほど空しいことはない。
どんなに意気地無しな俺だって、信じてる才能があった。見上げれば功績があった。過去に残った輝かしい思い出があった。
えらく美化された過去、さぞ期待した今が。
それは全部、主観が見せた等身大を写せない鏡だった。
自分を信じたことはない。
どれだけ正解や最善を弾き出しても、自分の意見は一番最後の選択肢。俺は俺の成功を認められない。
他人の評価を信じられない。
いくら褒められようと、いくら貶されようと、上っ面を見て出てきた言葉は決して本性まで届かない。
対面空虚
俺は自分と向かい合っても、それが俺には見えないだろう。
知らぬ
存ぜぬ
理解しがたい、仮面を愛した
俯瞰なんてのは所詮主観だ。
自分がよりよく観える角度に回り、自分がよりよく観えるレンズを使って、自分がよりよく観える脚色した、まるで自分に観えない、空虚な主観だ。
正面から、面と向かって、まるで他人を見るかのように自分を観た時、その時に相手が自分に見えたならば、それはえらく悲観主義な人間なのだろう。
等身大の自分がいつまでも見えてこない俺は否定主義である。いつまでも自分を認められない、等身大の自分があまりに小さく矮小すぎて見えない、空っぽを嫌った否定主義。
まるで承認欲求の枯渇した自己愛者。最も嫌った、最も平凡な理想の自分。
鏡は見れない。録音も聞けない。完全に至れない。妥協に妥協を重ねた完成作品。
そんなものに輪郭はない。あっちこっちに出っ張って、そこらかしこが凹んでいる、あまりに形の為さない。まるで空の星。海底のゴミ。
手が届かない理想は地平線上にあるのに、自分が地平線を見上げていると知らずに手を伸ばしている。
どこまでも浅ましい、空で虚ろな、対面に立てない沈んだ唐変木。
下を覗けば、俺はソコに居た。
----対面空虚
対面空虚 佐藤 田楽 @dekisokonai
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