19話 真実③

・8月24日・ 昼  ……謎の地下牢……


「君は……そっか、君がラピスだね」


 謎の男が目の前に現れる

 そして、私の頭の上に手を置き、


「その年で上級魔法を……生活の中で魔法を使う生活をしていて、一部の冒険者に見られてしまう。平然と高難度の魔法を扱っていることから、国は調査隊を派遣、調査の結果、国からも天才だと言われるようになり、神童グレン・ホワイトを思い出させる才能から、魔法学校へと推薦される……か」


 まるで全て見てきたかのように呟く。


「いやぁ、ここにきて正解だったよ! ソニアの記憶を消すのは疲れたが、君と出会った! いやぁ、思わぬ収穫だねぇ」


「お兄さん……だれ?」


「僕?……僕は、ただの探検家だよ」


 目の前の男はニヤッと笑う。

 見た目は人間だが、私にはわかる。


 この男は人間ではない。

 そして異質なオーラ、体全体が危険信号を出しているのがわかる。


「あっ! そうだ、いいこと思いついた! この子を陽太のところへ送れば、もっと面白いことになるね……うん、それがいい。そうしよう」


「さっきから何を言ってるの……? 全然理解できないんだけど」


 私は本音を言った。


「あー、わかんなくていいよ。ちょっと記憶ぼかしとくから」


 そういうと、男は再度、私の頭に手を置き、


「なにを……」


「この子の潜在能力はやっぱり普通の人とは全然違うね、でもそのせいで魔族の力が馴染んでいない……記憶を弄るお詫びだ。ちょっと力を出しやすくしてあげるね」


 瞬間、私の脳内に今まで味わったことのないような激痛が


「うううううううううぅぅぅぅ」


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い……


 何かが流れ込んでくる。


「泣かないのはとても偉いね……これはサービス、特殊能力『アレウス』だ。大事に使ってくれよ」


 頭の痛みが徐々に増していく。


「うううぅぅぅぅあああああああああ」


「あ、副作用のこと何も考えてなかった……まぁ喋れなくなるかもだけど、まぁそれも一時的だろう」


「うあああああああぁぁぁ!!!!」

 頭の痛みはしばらく続き、やがて消えていく。

 それと同時に私の意識は消えていった。


         ***

・現在・


「そして、目が覚めた時には陽太さんがいました」


 なる……ほど、まさかここまで重い話だったとは正直想像していなかった。

 魔族の目的、そしてマリンを助けた謎の男……


 今まで見えてなかったものがようやく形になってくる。


 それにしても……


「マリンには……ラピスって名前があったんだな」


「はい……ですが、部屋でも言いましたが、マリンで呼んでください」


「……思い出してしまうから、か?」


「……はい」


 マリンがラピスという言葉を聞くと、とても哀しげな顔になる。

 おそらくもう訪れることのない幸せを思い出してしまう……のだろうな。


「わかったよ。マリン」


「ありがとうございます」


 それにしてもマリンが元人間で、無理矢理魔族にされたとは驚いた。

 ますます許せない。

 でもこれで魔族たちの真の目的はわからないが、行動は分かった。


 魔族たちは各地から人間を攫い魔族にしている。


「マリン」


「はい、何でしょうか」


「家族を殺した魔族に復讐したいと思ってるか?」


「……」


 マリンは一瞬驚きの表情を見せた。

 しかしまた複雑な表情をする。


「復讐……したい、ですよ……でも、でも!」


 マリンの顔がクシャクシャに歪み、目からは涙がこぼれ落ちる。


「もし、私の家族を殺した魔族も元人間だとしたら……私は殺せません……」


「……」


 ……魔族になった人間の気持ちは今1番マリンがわかるだろう。

 自分の自我が消えていき、魔族としての別の自我が形成されていく。

 つまり、人間だった頃と魔族の今ではほぼ別人ということだ。

 自分の家族を殺したのが元人間だとしたら、その人には罪がない、と思っているのだろう。


「すまん、辛い質問をさせたな……」


 俺はマリンの頭に手を置き、撫でた。


「……やっぱり陽太さんのなでなでは気持ちがいいですね」


 しばらく泣き止むまで見ることに……


ドォォォン!!


 突然の衝撃音


 ここから離れてはいるが、とても大きい魔力のぶつかりを感じる。


「陽太さん! 何か来ます!」


 涙を拭きながら、マリンは叫ぶ


ドゴオオォォン!!!!



 音が近い、家の前からだ。


 マリンと一緒に慌てて家を出ると、そこにはアリスが倒れていた。


「とりあえず……1戦目は私の勝ちということで良いか?」


 声の方向――空を見上げると

 ……そこには白い羽を広げた美しい天使?がいた。

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