9話 出会い

・8月17日・ 夕方 ……ソルダート平原……




 目の前にリスタの森が見えてきた。




(ふぃー、疲れた……ものすごい距離だな、歩いても歩いても草と岩と土! 何もない! まさか1日もかかるとは思わなかった)




(でもお兄さん覚えてる? 村から王国まで2週間ほどかかるって)




(え、じゃあもしかしてこの森で13日くらい過ごすの?)




(残念ながら正解! この森はたまに急斜面なところがあり、とても通りにくい道もあったりしてとても時間がかかるのよ)




(疲れたけど……まぁ仕方ないか……)




 と、思っていると後ろから声がする……




「そ、そそそこのお兄さん、わわ、私の占い受けて行かないかい……?」


 振り向くと1人の少女が立っていた。


 ローブで顔は見えないものの、若いのがわかる。


 声が震えてる……緊張してるのだろうか?




 (怪しい……)


 と、アリス、それに着いては同意見だ




「あ、えーと……こんなところで占いか?」


「あわわ、確かに……いやでもここで是非、おお、お願いします!」


 するとローブの少女はぴっちり90度にお辞儀をした。


 それにしてもガッチガチだ……




「まず君の名前を教えてくれるかい?」


「すーはー、はい! 私は……」




 …………………………




 15秒ほど経つが、なかなか喋らない。


 ……なぜここで沈黙……?


「……そうです、ミューです! ミューと申します!」


 と、思い出したような顔をして答えた。


 まさか名前を忘れてた訳でもあるまい……


 余計に怪しく感じてしまう。






(変な子ね……)


(あぁ、同感)




 俺とアリスは同じ考えだった。




「えっと……俺の名前は鈴木陽太だ。陽太って呼んでくれ」


「……よかった……やっぱり……」


 ミューがボソッと何かを言った。


「ん? なんか言ったか?」


「い、いえいえ!! なにも!!」




「占いの件だが……お金も何も俺は持ってないぞ?」


「お金はいりません。私は占いの修行中でこうして通る人に声をかけているのです。だからもしよければ……と思って」




(アリスさんや、どうしようか)


(お兄さんお兄さん、私はこの人悪い人に思えません)


(根拠は?)


(……勘です)


(わかった。占い、受けてみるか)




「占い受けることにするよ」




「ほんとですか! やった!」




 ……ということで、俺とミューは向かい合い、占いを始めた。




「ムムム……でました!」


「そ、それで……?」


「ふむふむ……この森に入ったら2人の人がいます。その人たちと行動するととりあえず安全に森から抜けれると思います」




 なんだその占いは


 強大な何かがお前を狙っている! とか、いつか決断を迫られるだろう! とかゲームでよくありそうな大雑把な占いと違ってなんかやけに具体的だ。




「結構具体的なんだな」


「ははは……そう言う占いなんですよ私は……」


「まぁ、森に行くには1人じゃ心細いからなぁ。でもそんな人が本当にいればいいけどな……はは」


「多分、その人たちからくるので安心してください」


「そんなことまでわかるのか……?」


「わ、私の占いは特殊なんですよ……」




 なんか胡散臭いなぁ……


 こういうのに限って、すごい対価を求めてくると思う。


 よし、何か高いものを買わされそうになったらちゃんと断ろう。




 すると、急にミューがぎょっとした顔をする。


「えっと他には……え!? そんな早い!! ……す、すいません! ちょっと急用ができて! もう行こうと思います!」




 あれ? 特に何も要求されなかった……




「あ、あぁ、ありがとうな、占いしてくれて。ちゃんと覚えておくよ」


「絶対に忘れないでくださいね!」


「ああ! じゃあまたな!」


 俺は背を向ける。


 そうすると「そうだ、これだけは……」と言うとミューは




「……あなたの中にいる少女のこと、誰にも言わない方がいいですよ」




「えっ!?」


 振り向いたがもう誰もいない。


 今……なんて言った……?


 アリスが死んで俺の中にいることは俺とアリスしか知らないはず……。


 ミュー……いったい何を知ってるんだ……?


(……今の人……不思議だね。何で私のことを知っていたんだろう……?)




(俺もわからない……)




(雰囲気? オーラ? なんかよくわからないけどお兄さんに似てた……そんな感じがする……)




(俺に……?)




 すると突然森の方から人が2人現れる。


「誰だ!」


 俺は少し警戒し2人を見る。


 1人は男、緑の髪でぱっと見頼りなさそうでひょろひょろした眼鏡をかけた男だ。


 その右にいるのは女、金髪で動きやすい格好をしており、腰には短剣がある。


「驚かせてごめんね……僕は、ただの探検家だよ」


「私はただの冒険者よ!」




 急に出てきた男と女は手を上にあげて現れた

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