表の世界と裏の世界

熊パンダ

1章 太陽の王国

1話 異変

・8月1日・ 昼  ……陽太の家……


 2021年8月1日。

 15時00分


 蝉の鳴き声がジリジリと鳴り響く猛暑。

 ここ東京も、テレビでは37℃と言われていた。

 冷蔵庫から好物のチョコミントアイスを取り出し、口に放り込む。


「くぅ……やっぱこれだよなぁー」


 ガンガン付けている冷房、そしてこのアイス……なんとも天国のような空間だった。

 窓の外、道路を見ると陽炎が立ち上り余計外に出ようと言う考えが消え去る。


「夏休み……かぁ……」


 俺、鈴木すずき陽太ようたは今日から夏休みを迎える。

 ……だが、特にすることがないのだ。

 部活動は何も入っていない。

 進路関係もまだ2年生なので、正直全然考えていない。

 いつもは妹と遊ぶのだが夏休み登校日と言う小学校の変な行事のため今はいない。


 特にすることもなく平和な日々。

 いや、本当はしなければならないことがある……ただそれも遠回しにしているだけ。

「また、調べてみようかな……明日から」


 でもどこまでも前向きにはなれない。

 したくない事は結局は明日みらいにまわしていく。

 そうやってどんどんだれていくのだ。

 そう、夏休みの宿題のように。


『……次のニュースです。8月1日12時30分ごろ、東京都渋谷で、女性から110番通報がありました。警察が女性に駆け付けると、見に覚えのない謎の肉塊と血が部屋に散らばっており、警察はこれが人間のものであると……』


 ふと、付けていたニュースに目がいく。

 物騒な事件……最近増えてきたような気がする。

 失踪、謎の肉、建物消失、謎の爆発etc.

 数えきれないほどの謎事件だ。

 けれどもぶっちゃけ自分には関係ない……そう思っていた。


         ***


 時計を見ると20時を示していた。

「遅すぎないか……?」


 明らかに妹の下校時間を過ぎている。

 ちょっとした寄り道をしているのかとあまり気にせずにいたが、ここまで遅いと事件に巻き込まれたのを疑ってしまう。

 妹、鈴木すずきみやびは12歳。

 20時まで帰って来ない、ことは1度もなかった。

「ひとまず……電話だ」


 なるべく落ち着いて学校に、そして親に電話をかける……だが繋がらなかった。

「もしもし……あ、やっぱり繋がらない……」


 これはもう探しにいくしかない……そう思った。

 その瞬間、玄関の方からガチャリと音が聞こえた。

「雅?」


 俺はリビングから出て、玄関へと向かった。

 そこにいたのは雅ではなかった。

「親父……?」


 1度も見たことがない厳しい顔つきで、俺の父……鈴木すずき隼人はやとが立っていた。


「陽太! 無事か!」

 ドタドタと土足で入ってくる父。

 明らかにいつもと様子が違う。


「ど、どうしたんだよ親父……そんな慌てて」

 異常事態なのは空気で察せるが、気持ちが追いつかない。


「雅が攫われた」

 流石に耳を疑った。

 

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