第35話 陰謀と偶然は表裏一体2
その後も不機嫌だった蘭といつもの通学路を歩き、いつも通りクラスが違うという理由で別れたのだった。
別れ際、蘭はこんなことを言ってきた。
「…顔の良し悪しというのは愛の発生のとっかかりにしか過ぎないということかな?」
顔の良し悪し、つまり風貌の是非がその後に発生するはずである愛のとっかかりにすぎないか否か。
これは好みのタイプがない俺にはよく分らないのだが感覚的には正しいような気がした。
というのも、自分の好みのタイプというのはあくまで性的趣向にしか過ぎない気がしたからだ。
しかし、愛というのは必ずしも性的趣向のことではないだろう。
例えば親子だ。
親は子供に性的興奮を覚えるから愛を持っているのではないだろう。
親は自分たちが苦労して生んだわが子が、今懸命に自分たちの後ろを追ってくるわが子が、自分たちがいなくなっても続いていくわが子の歴史がいとおしくて仕方がないのだろう。
愛というものはそういうものだ。
愛というのは常に未来を含んでいる。
同時に愛というのは過去も今も含んでいる。
いわば愛とは時間なのだ。
長年一緒にいたから、一時期共に苦難を乗り越えたから、そういうような時間を依り代として愛は生まれる。
そんな愛に性的趣向はあくまで中立なのだ。
確かに性的趣向が合えば一緒にいる時間は増えるかもしれない。
確かに性的趣向があっていればあっていないときに比べて激しい夜の回数が増えるかもしれない。
しかしそれは直接的には愛に何らかかわりがないのだ。
間接的にはあるにしろそれはなくてもかまわないことなのだ。
長年一緒にいたから、苦難を一緒に乗り越えたから、理由は何でもいい。
過去を依り代とし、今を一緒に居られて、未来のこれからの展望に笑むことができる、それが愛なのだ。
であるから俺はその問いにこう答えた。
「そう思うぞ。」
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