第16話 野次馬だって当事者です8

俺はエリックを俺の部屋に招き入れた。


「へぇ、結構きれいにしているんですね。」


そりゃあまあ、暮らし始めてまだ2日目だからな。


「そこにかけろ。」


エリックは俺が指さした方向を見て、椅子を見つけ出し、そこに腰かけた。


「では話そう。その前にお前は本当にこっち側なんだよな?」


「はい。僕もサンドラさんの統御のためにこの世界に来ました」


「なるほど。俺の仲間ということで間違いはないようだな。で、お前は前の世界でどんなことがあったんだ?」


「はい、僕は前の世界では勇者だったんです。しかし僕があまりにも強すぎたせいで魔王軍を魔族もろとも滅ぼしてしまって。そんな僕をあの女神さまが拾ってくださり今に至ります。」


「なるほど、お前は元勇者なんだな。俺は魔王だった。経緯もほとんどお前と同じだ。」




「ほう、魔王ですか……」


そういうとエリックという名の男は意味ありげな笑みを浮かべる。


「では殺さないとですね。」


そう微笑みを浮かべながら彼は言った。


その途端辺りが小刻みに揺れ始めた。


「ほう、ここでか。まあいいだろう。」


地響きはさらに大きくなり、どんな鈍い人でも体でしかと感じれるものだった。




エリックという名の男はそこには何もないが剣の柄を握るような動きをし、もう一触即発の展開であった。




そんな膠着状態の中、いわば開戦の合図である攻撃を待つのみとなっている状態の中、時は一定のリズムに従って流れる。




そんな時、エリックはふっと緊張を解き、俺もそれに従って解いた。


「嘘ですよ。大体僕のところにいた魔王とは別人物なんで恨みは持ってないんでね。ただどれほどの人物なのか試しただけです。そんなことよりさっきの緊張感、シンさんは相当強いんですね。個人的に手合わせしてほしいと思ってきました」


「いや、よしてくれよ。俺は無駄な争いは好かん。」


「ハハハ、魔王のくせに優しいんですね。僕の世界にいた魔王とはまるっきり違います」


「いや、別に優しくなんかは……」


そんな俺の言葉を遮るようにエリックはやることはやったと「じゃ、帰ります。」と言って帰っていった。











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