第10話 野次馬だって当事者です2

それからの俺たちはほとんど黙りながら、たまにぽつぽつと会話しながら馬車に乗っていた。




その間に日は暮れ、夜になったので馬車は休憩時間となった。




ここで一夜を明かすらしい。




俺と蘭は自前の寝袋で隣り合って寝ることにした。




俺は荷物から寝袋を取り出す。




この日のために買った新品のものだ。




中に入ってみると最初こそは冷たかったが、だんだんと俺の体温によって温められて日が陰り冷え切った寒空の夜を過ごすのにちょうどいい温度となった。




横を見るともう蘭は寝入っている様子で、仰向けになって目を閉じていた。




夜は静かで蘭のすーすーという寝息ですら俺の耳に届くほどだった。




俺はそんな蘭の無防備な姿に、隣の俺に気を許しているこの状況に友情とは別の、何らかの感情を抱きそうになった。




これは俺が前世のころに感じた、篭絡しようとしてきた女たちに感じた感情よりもずっと甘美な、甘酸っぱいものだった。




俺はこんな夜がずっと続けばとすら思えた。











夜が明けた。




野宿していた乗客たちはのそりのそりと馬車に乗り始め、馬も昨日の疲れた様子とは打って変わって元気いっぱいだった。




俺はまだ寝ている蘭に声をかけると、一緒に馬車へ乗り込んだ。




馬車は最初はゆっくりと動き始め、だんだんとスピードを上げているようだった。




このペースなら今日の夜には着くだろう。




その間、俺は蘭と寮生活について語り合っていた。

もっとも、コミュニケーションが苦手な俺と元来無口な蘭とでは会話が続くわけもなく、ぽつぽつとしか話さなかったが。











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