メモに打った好きな言葉・詩など②

も〜〜みんな大好きなんですねほんとに……

一挙放送します。


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誰も知らない野の果で

青い小鳥が死にました

  さむいさむいくれ方に


そのなきがらを埋めよとて

お空は雪を撒きました

  ふかくふかく音もなく


人は知らねど人里の

家もおともにたちました

  しろいしろい被衣着て


やがてほのぼのあくる朝

空はみごとに晴れました

  あおくあおくうつくしく


小さいきれいなたましいの

神さまのお国へゆくみちを

  ひろくひろくあけようと

─── 金子みすゞ「雪」

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今は 二月 たつたそれだけ

あたりには もう春がきこえてゐる

だけれども たつたそれだけ

昔むかしの 約束はもうのこらない


今は 二月 たつた一度だけ

夢のなかに ささやいて ひとはゐない

だけれども たつた一度だけ

そのひとは 私のために ほほゑんだ


さう! 花は またひらくであらう

さうして鳥は かはらずに啼いて

人びとは春のなかに笑みかはすであらう


今は 二月 雪に面につづいた

私の みだれた足跡……それだけ

たつたそれだけ──私には……


───「浅き春に寄せて」立原道造『優しき歌 I』

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 人間は一人一人にちがつた肉体と、ちがつた神経とをもつて居る。

 我のかなしみは彼のかなしみではない。彼のよろこびは我のよろこびではない。

 人は一人一人では、いつも永久に、永久に、恐ろしい孤独である。


───萩原朔太郎 序「月に吠える」

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頬に頬よせ 泣きあおう 

胸に胸よせ 燃えたとう 

なみだが炎に そそぐとき 

しっかり抱いて 死んじまおう


───ハイネ「頬に頬よせ」

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ふるさとは遠きにありて思ふもの

そして悲しくうたふもの

よしや

うらぶれて異土の乞食になるとても

帰るところにあるまじや

ひとり都のゆふぐれに

ふるさとおもひ涙ぐむ

そのこころもて

遠きみやこにかへらばや

遠きみやこにかへらばや


───室生犀星 「小景異情」

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きみが死んでも

やはりあひたいとは思はない、

きみも

ゆめ、あひたいとは思はないであらう。

僕らはわかれてゐた方がいい。

そののぞみはかなつた。

きみは遠くに去つた。

去つたきみには

全くの僕が掻き消えた、

きみは清々するであらう。

僕もなにか清々してゐる。

きみの感情を害はないだけでも。

───「去る」室生犀星『我友』


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死ぬとらくになる、

死ぬとなにもしなくていい、

死には責任があるやうでない、

死はからつぽだ、

死は弱い、人は死んではいけない、

人は生きることだけ考へればいい。

きみは死にすら弱かつた。

だからきみに花のひとつも

そつと握らせたくなる。


───「死」室生犀星『我友』


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 私はほんとに室生犀星の「死」が好きなんです。最後の「花のひとつもそつと握らせたくなる」の転換の仕方がじわりと、どこかあたたかくて……

 「ふるさとは遠きにありて……」と始まるこの詩は非常に有名ですよね。戦場にいた兵士がよく口ずさんでいたとお聞きして胸が苦しくなりました。

 立原道造の「浅き春に寄せて」!美しい詩ですよね。というか、立原道造はこのような、美しい青春をパステルカラーで描いたような詩をお書きになる人なんですね。早逝したのが非常に悔やまれます。恋にやぶれ嘆く「わたし」の悲しみを置いて冬は過ぎ、誇らんばかりの美しさを携えて春が近づいてくる。悲しみに暮れみだれた足跡を雪に残す「わたし」。「わたし」を置いていかなかったたった一つの存在は、冬が残したその雪だった……私の解釈はこんな感じですが、合ってるでしょうか。 

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