第8話 一つ見えたら次々と見え始める、嫌な一面~悩む従者たち~ 俯瞰視点(1)
「…………
「…………ええ。
チェス13連戦があった日から、12日後。ルーエンス邸の一室では、2人の従者と侍女がコッソリと顔を突き合わせていました。
『ハルク、聞いてくれ……』
『はっ。な、なんでございましょう……?』
『メリッサはな、時間にルーズな部分があったんだよ……。しかも注意しても、「大事な席では厳守するからだいじょうーぶ」で済ませるんだ……。そういう問題じゃないのに……』
『ハルク、あのな……。メリッサはよく、物を出しっぱなしにしたり散らかしたりするんだよ……。……僕は、そういう事が苦手なんだよ……』
『ねー、リーン。聞いてよぉ』
『は、はい。なんでしょう、お嬢様』
『オスカーってばね、くつろいでる時に自分の唇をベロでペロって舐める癖があったの。見るたびにゾワゾワってなるから注意して、その時はすぐ直るんだけどねっ。ちょっとしたらまたやってて、全然直らないのぉ……っ』
『リーン、聞いてぇ……っ。オスカーって、うんちくを語り出すと止まらないの。ソレは興味がないって言ったら別のうんちくを出してきてさぁ……。とにかく知識を自慢しようとしてくるの、苦手ぇ……』
などなど。
オスカーとメリッサはあの日から、最低1日1つは互いの嫌な一面を発見。2人はどちらも『これからは良い日になる』と言っていましたが、それは大間違いでした。その影響によって段々と心の距離が離れており、今やすっかり微妙な雰囲気になってしまっていたのです。
「…………このままでは…………」
「…………そうですね。婚約が解消となり、それが大変な状況を生んでしまいます」
相手がヴィクトリアからメリッサとなったことは、すでに知れ渡っています。そのため再度白紙となれば、世間は今度こそ両者問題ありと判断する――世間からの信頼は低下してしまう上に、そんな者のもとには縁談の話も来なくなってしまいます。
そうなれば勿論、待っているのは茨の道。2人は主の身勝手な行動に憤りを覚えているものの、メリッサとオスカーは長年付き従っている存在。そのため放ってはおけず、どうにか関係を修復できないか相談していたのです。
「我が主もノエマイン様も、互いを愛し合ってはいるのですが……。悪い一面に気付くスピードが、早すぎますね……」
「何事も、良いものより悪いものの方が心に残ってしまいますから……。時間に比例して、悪化してしまいますね……」
「「………………どうすれば……。いいのでしょうかね……」」
2人は眉間に皺を刻んで唸り、力を合わせて真剣に思案します。そうして彼らは必死に意見を交換し合い、ソレを始めて2時間後――。ようやく、名案が誕生しました。
「リーンさん……っ! これは、いいですね……っ」
「ええ、妙案です……! ……今は、刻々と悪化している状況。善は急げといいますし、早速動きましょうっ」
「そうですね……っ。行きましょう……!」
2人が発案したものは、メリッサとオスカーがとある行動をしなければなりません。そのため彼らは嬉々として頷き合い、それぞれの主のもとへと急いだのでした。
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