第6話 新たなモヤモヤ(メリッサ編) メリッサ視点(3)

((…………………………。チェスをやろうって……。オスカーに言わなきゃよかったよぉ……))


 あたしはぼんやりとチェスボードを見下ろしながら、とっても後悔していました。

 だって。だって――


『チェックメイト~っ!』

『メリッサ、ごめんなさい。泣きの1回、お願いします』


『ちぇっ、チェックメイト。はいっ、も~終わりで――』

『もう1回! 良い波が来ている気がするんだよっ! お手合わせを、お願いします……!!』


『チェック、メイト。も、もぅ、いーよね……?』

『次こそは、自分の壁を越えられる気がするんだ……!! もう一度、お願い……!!』


『…………はい、チェックメイト。……もぅ、何回も「もう一回」をやったよ。満足した、よね?』

『………………正真正銘、次でラストにします。メリッサ、やろう……!!』


 こんな感じで更に6回対戦して、今は計9戦目の最中だから……。

 あたし……。再戦なんて、もぅしたくないんだよぉ……。でもでも圧がすっごくて、なんだか断りにくいの。

 今日のオスカー……。ど~しちゃったのぉ……?


「ね、ね、オスカー。ねえ、オスカー」

「…………………………」


 しかもね。今回の勝負は今までにないくらい集中しちゃってて、何を言ってもお返事がないの。

 疲れたよぉ。不気味だよぉ。もぅ、嫌だよぉ……。


((だから……。この勝負のループを終わらせたい、けど……))


 勝負心に火がついちゃってて、きっとオスカーが勝つまで終わらない。

 なのに、ね……。オスカーは……。オスカーは……っ。



((すっごく弱いの……!!))



 もうね、信じられないくらい弱いの。

 きっと実力は1桁の子並みで、たぶんチェスとの相性が壊滅的に悪いんだと思う。何度やっても、負けない自信があるの。


((こんな人に負けるには、ワザとミスをしなきゃいけない。けどけど何度もミスをしてたら気付かれて、絶対に納得せずにもう1回って言い出す……))


 だから、お願い。1回くらいのミスであたしが負けられるよーに頑張って!


((お願いだよぉ……っ。お願い……っ。お願い……っっ!))


 心の中でしっっかり念じて、ようやくね、その時が来たの。

 でもね……。それは4回後で、合計13回目……。

 だから、もうヘトヘトで……。


「付き合ってくれてありがとうメリッサ! さあ庭に行こう!」

「……んーん……。あたし、疲れちゃったから……。夜ご飯まで、眠るよー……」


 動ける体力なんて残ってなくて、ぱたり。そのままベッドに倒れ込み、頭までお布団をかぶって眠ったのでしたぁ…………。

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