コラージュ

小さな手がそっと持ち上がる。

真っ白な銃がその内にあった。

しばし、その光景に見とれた。

白い銃はそう大きくもない彼女に不釣合いじゃない。とはいえ同じ制服を着た女の子が銃を構えていること、それ自体が異常だ。

この場で銃。あまりにも現実離れしたその対比は、嫌でも僕を刺激した。

銃は、科学が生んだ暴力の結晶だ。片手で掴め、どこでも持ち運ぶ事が出来、そして誰にでも使える。威力は持った者の腕力とは関係がない。一度引き金を引いたら、出た弾は何かを傷つけずにはおれないのだ。

――それは、理屈抜きの悪だ。

だから銃を使う人間に、本当に穢れていない人間などいない。臆病者か卑怯者か、サディストかあるいは力に取り込まれてしまった者か。

だけれど彼女の手にあるのは、汚れを知らない純白だ。

塗ったのではない、銃自体がありえないほど白いのだ。

まるで僕達の世界というキャンバスにその銃だけを乱暴にコラージュしたかのように、周囲の全てのものからくっきりと浮き上がって見える。

その前では、世界の事象を変えるという蝶の羽ばたきひとつさえも、する事ができなかった。

彼女は分かっているのだろうか。

その指を動かすという事を。

引き金を引く意味が。

もう、今日のような日々には戻れないことを。

僕達が教えられてきた事が何もかも嘘になってしまう世界になることを。

知っていて、なおかつ君は引き金を引くの?

こんな時なのに、僕は彼女の立つ姿を興奮をもって見つめていた。

白い銃はそう大きくない彼女に不釣合いじゃない。とはいえ同じ制服を着た女の子が銃を構えていること、それ自体は異常だ。

――かっこいい。

とろけそうだ。

自分の命より、彼女にこの姿をやめさせる方が罪だ。


彼女は少しだけ眉を寄せて、おそらく狙いを絞り。

一気に、引金を引いた。

鼓膜を痛ませる音が、始まりと、終わりを告げた。

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