彼はカメラマンとして乗船していた
私の腕時計の針が夜10時を過ぎた頃、同室のカメラマンが戻って来た。
私が部屋にいることは、すでにスチュワーデスのひさえさんから聞いていたようであった。
彼は40代前半くらいの身長の高い男で、肩からLEICA(ライカ)のカメラをぶら下げていた。
私はNikonを持っていたが、現代のカメラで彼を驚かせてはならないので、リュックにしまっておいた。
「間違えて乗ってしまったらしいですね。なんとも気の毒なお方だ。
」
彼は言った。
「ええ。私もまだ頭の中の整理がついていません。」(いろいろな意味で…)
私は言った。
彼はカメラマンで、日本郵船氷川丸のシアトル航路を撮影する為、乗船していた。
先程まで乗客の食事風景やバーやラウンジで過ごす姿、デッキでくつろぐ姿など撮影していたようだった。
「これも何かの縁だから、困ったことがあればなんでも言ってくれ。」
と彼は言ってくれた。
私達は彼が持ってきていたウィスキーを部屋で飲み、私は時代背景を探りながらおそるおそる話をした。
氷川丸は真っ暗な太平洋をホノルルに向かい航行していた。
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