第3話
「「 ハァッ... 」」
スミスとアマンダは二人揃って大きなため息を吐いた。普段はお互い領主としての仕事があるので、領地から出て来ることはないが、今は社交シーズンなのでこうして王都に来ている。
会員制のクラブでカウンターに座り、酒を酌み交わしながらお互いの仕事の愚痴を言い合うのが、幼馴染みである二人にとって社交シーズンの度の恒例行事となっていた。
だがここ最近は、もっぱら自分の子供に対する愚痴に終始している。一人は超ファザコン、一人は超マザコンと...二人にとって頭の痛い問題である。
「やっぱりあの二人を無理矢理にでもくっ付ける他ないと思うのよ...」
「そうだよな...事情を知ってる俺達じゃないと手に負えないよな...」
「そうよ。もし仮に他の誰かとくっ付けようとして、あの子達の性癖がバレたりしたら...」
「社交界で死んだも同然になるよな...無論俺達も...」
「えぇ、噂は光よりも早い速度で広まるから、どこにも行き場がなくなるわね...」
「「 ハァッ...育て方を間違えた... 」」
二人はもう一度大きなため息を吐いた。
「...愚痴ってばっかりでも仕方ないわね...少々荒療治にはなるけど、動くことにしましょうか」
「何か手を考え付いたのか?」
「今度、王家主宰の舞踏会があるでしょ? そこでね...」
◇◇◇
王家主宰の舞踏会当日、スミスはカレンを、アマンダはライルを、それぞれ引き連れてやって来た。
「あらぁ? マザコン野郎じゃないの? こんな所で何してるのよ? お子ちゃまはもう寝る時間よ? さっさと帰ってママのおっぱいにしゃぶり付いていればいいのに。キモッ!」
早速カレンがライルに噛み付く。ライルも負けてはいない。
「フンッ! ファザコンビッチが偉そうに! お前こそさっさと帰ってパパと乳繰り合ってりゃいいんだよ! キモッ!」
「なによ!」「なんだよ!」
「「 ガルルルッ!」」
「...なぁ、本当にやるのか...」
「...やるしかないでしょうよ...」
スミスとアマンダの二人はもはや諦観の境地だった。やがて王族が入場し、舞踏会が始まる。
「ほら、カレン。挨拶に行くぞ?」
「あなたもよ、ライル。付いて来なさい」
スミスとアマンダは王族に挨拶しに行くため、それぞれカレンとライルに声を掛ける。貴族としての義務のため、いがみ合っていた二人も渋々従う。
「陛下、今宵はお招き頂きましてありがとうございます」
「おぉっ! スミスにアマンダか! 良く来てくれた! 元気そうでなによりじゃ! そっちに居るはお前達の子供達か?」
「はい、実は陛下にご報告したいことがございまして」
「なんじゃ? 言うてみよ?」
「このライルとカレンがこの度、婚約することになりまして」
「「 んなぁっ!? 」」
寝耳に水だった二人が驚愕する。
「なんと目出度い! 良かったのぅ! 儂も祝福するぞ!」
「ありがたきお言葉」
スミスとアマンダの二人はしてやったりという顔をして、ライルとカレンの二人は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
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