第6話 蜘蛛だって負けてない。
朝起きた時、目の前には楽園がそこにはあった。
そして現在、快適空間{アリスの中ね召喚獣だから}にぼくはいる。
『だってさ朝起きたら二つの楽園があったからさ、もっと楽しみたいじゃん! だから楽園を探索してたわけ、そんでもう少しで天国だって時にアリスが起きて、おはようって挨拶した途端、ニコッてされて放り出されて快適空間に飛ばされたの……』
「ああ〜、もう少しだったのに……」
今日アリスはギルドに行くみたい、多分昨日の件だと思うけどね。
『おっ! はいくるよ〜、3.2.1、………!!』
「……アグー? だよね!?」
「ばぁい! あぐぅーでず……」
『気持ち悪い』
「あー、よかった……」
「うん? どうしたの? なんでそんなに遠くに?」
「いや、そんな事ないよ、うん」
「うん?」
近寄ると……。
「ひっ!」
「なになに?」
「ご、ごめんまた失敗しちゃって……」
体を見ると……ってあんまり見えなかった。
「もしかして、蜘蛛?」
うんうん、と頷くアリス。
『やっぱりか』
「そんな嫌なら変えれば良いのに」
「なんかね、そんなにコロコロ変えられないのよ」
「あ、そうなんだ。じゃあ仕方がないか」
無意識に近づくと。
「ひっ!」
かなり拒否られた!! 泣ける……。
「今日は、ギルドに行くんでしょ?」
「……え? 何?」
「だから、今日はギルドに行くんでしょ?」
結構大きめに話す。
「そ、そ…だ……」
『聞こえねぇ〜』
『まぁあんだけ離れてりゃ聞こえんわな』
多分10メートルくらいあるかな……
泣ける……。
『召喚には失敗? いや、失敗は決してしてないんだよ蜘蛛を召喚したんだから、アリス的には失敗らしいけど……』
きっと昨日の夜の罰が当たったんだと思う……。
『ビバ、楽園! バンザイ楽園!』
その後、凄くシュールな光景がそこにはあった。
アリスの後ろ約10メートル後ろを歩く謎の蜘蛛ってね!!
『あー、見られましたよ。街の人から変な蜘蛛がいるってね。アリスが私の召喚獣なんです、と言ってくれなかったら狩られてたねきっと……』
『そんなに嫌なら戻せば良いのに……と言いたくなった』
……あっ! もしかして、戻すのも嫌とか………。
泣ける。
そんなやりとりを何度か行いながら、ギルドに到着した。
「あのぉ〜、アリスさん!? あの蜘蛛は……?」
「あ、あれは私の召喚獣です」
『紹介されたのでお辞儀をしておいた』
「あ、そうなんですね」
「気にしないで下さい」
『気にしないで下さいって、あなたが嫌がるからこんな端っこの屋根に引っ付いてるんでしょ!』
「では、昨日の……」
《バン!》ギルドのドアが勢いよく開き、三人の男達が入ってきた。
「おい、どこだ? 昨日盗賊を捕らえたっていう女は……」
『あちゃ〜、出ました。ど定番のやられキャラ』
「多分、私です」
『はい、その質問に答えなくて良いのに答えちゃう可愛いアリス』
アリスに近寄る男達。
「ふ〜ん、良い女じゃねぇ〜か、この後俺らに付き合えよ、なぁ〜」
「そうっすね、俺らが冒険者のノウハウを手取り足取り教えてあげましょうや!」
「うんうんうん」
『ああ〜、お前らも盗賊とおんなじな……』
「いや、遠慮しときます」
「遠慮するなって!」
男の一人がアリスの腕を掴む。
「痛い!」
「ちょっとあなたた……ち……??」
ギルドの人が最後まで言えなかったのは何故か。
「うぐっ、うぐぐー」
『はい、いっちょ上がり』
天井から宙吊りになっている男が三人、そしてその男達を睨む一匹の蜘蛛……。
『はい、ぼくでーす!』
口を開けて毒の塊を三人に見せてやった、おまけにカマを振る仕草もしてやった。
『はい、ご苦労様で〜す』
失神する三人。
続きをどうぞ、とアリスにジェスチャーで伝える。
「あ〜、ほっといて良いそうです」
「……はぁ〜、そうですか。では、改めて昨日の件ですが、アリスさんのおかげで盗賊の確保、討伐が出来ました。また昨日の夜にも二人の盗賊が捕まりました」
「そうなんですか?」
「アリスさんは知らなかったんですね?」
「はい、私は知らない……」
『なんで、ぼくの顔を見るのかな!? アリスちゃん』
「多分、いや大丈夫です」
こっち見てるね、てへぺろ!
「そこで報酬なんですが、金貨5枚、銀貨20枚になります」
「………え?」
「え? どうしました?」
「あ、いや。多くないですか?」
「いや、これでも少ないくらいで申し訳ないほど何ですけど……」
「そう……ですか」
「では、確かにお渡ししましたので」
その後、アリスはギルドを後にしたのだが心ここに在らずとはこういう事なのかね。
ぼくが近くに寄っても問題なかったし……。
「あ……す」「あり……」「アリスってば!!」
「ひっ!!」
蜘蛛から遠ざかるアリス。『ぼくだよ!』
「そんなにボーッと歩いてたら危険だよ、まぁ、ぼくが見張ってるけど」
「だって……こんな、こんな大金持った事ない……」
『あ〜、そういう事ね』
「よし、アリス。とりあえず服を買いに行こう」
「服? 服ならこれで……」
「いや、ボロボロだからね、それ!」
そういうわけで服を買いに行くことになったのだが、服選びの最中も数メートル先にいる
それを見た店員さんもだいぶ距離を取って接客をしていたのは言うまでもない。
そんなこんなで服を数着買い店を後にした。
結構買ったけどまだまだお金には余裕があった。
ちなみにこっちのお金は今のところ銅貨・銀貨・金貨があるのはわかっている。
向こうのお金に変えると。
銅貨 1枚 100円
銀貨 1枚 1,000円
金貨 1枚 10,000円
こんな感じになる様だ。
今回の報酬で70,000円の報酬だった様だ。
こう見たら少ないかもね。
アリスにとったら大金らしいけど。
「アリス!?」
「はひっ!」
「どうしたの? いや、こんなに良いのかな?」
「何が?」
「こんなに良い服を買っても」
『良い服ねぇ〜……』
結局店員さんに勧められた服は可愛すぎるし私には勿体ないと言い、極々シンプルなどこにでもある様な安い服を選んだのだ。店員さんも「本当にそれで良いんですか?」と聞き返したくらいだから。
『一つ良かった点を挙げるとすると……。楽園がくっきりはっきりわかることだね、うん!』
「まぁアリスが良いなら良いんじゃない」
「そうだね……ひっ!」
蜘蛛から遠ざかるアリス……。
『いや……もうそれ良いから!』
「ごめんね、まだ慣れなくて」
「まぁ、しゃあないしゃあない。んじゃ今度は宿を探すか!」
「宿?」
「……いや、さも当然とばかりに宿?って聞くのやめて! ちなみに今アリスが寝てる所、あれは宿とも、家とも言えないからね!」
「えっ、でも居心地は良いよ」
「あのね、若い女が納屋で暮らすなんてやめなさい! やっとお金稼げたんだから! じゃあ早速行くよ!」
しぶるアリスの腕に糸を巻きつかせて逃げない様にしてやった。
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