第10話 髪整わば忍ぶもままならん

 都内某オシャレ美容室


 「今日もシャレオツだな♪」

鏡見るたびにオシャレがほとぼしる、こういう男だよな〝カリスマ〟って。 


「今日も客をオレ色に染めます、かっ!」


「すまぬ」


「お、客か?」

今度はどんな客だろう。どんな奴でも大抵驚かねぇけど、オレカリスマだから!


「予約とやらをさせて貰っていた者だ」


「いらっしゃ..忍者!?」

ちょっと待てよいきなり忍者かよ、流石のオレも初めてだっての。


「席にお掛け下さい」「かたじけない。」

落ち着けオレ、お前はカリスマだろ?

どんな客でもシャレオツに変えることのできる、現代の魔法使いだぜ?


「本日はどういったカンジにしちゃいます?」


「..散髪してくれ。」


「..成程、散髪っ..スね」

どこをだよ!?

なんでずっと頭巾みたいなやつ付けたままなんだよ、目しか出てねぇじゃねぇか!


「あの〜..申し訳ないんスけど、その被りもの外していただけませんかね?」


「……」


「お客さん?」


「……」


「あの〜..。」

なんだよ、ポリシーってかぁ?

忍者たるもの的な警戒してるのかよ。自分で言ったんだぞ、散髪しろって。


「お客さん、被り物外して貰っていいスか?

おい、外せって言ってん..」


「zzz...。」


「は?」

寝てんのかよ早ぇよっ!

座って直ぐ心地良い訳ねぇだろ!


「滅びろ現代社会..。」

なんか思想強めの夢見てる、内に秘めた感情出ちゃってんだけどこの忍者!


「..ふん、仕方ない。」「え?」

起きてんの?

急に立ち上がって..何するつもり?


「借りるぞ。」


「あ、それウチのハサミ!」

ハサミ握って、席戻って..何するつもり?


「ふん、はぁっ!」


「頭巾外して髪切り出した!」

ウソだろ!? セルフで髪切り!?

何カリスマ差し置いて剪定してんだコラァ!


「お客さん困ります!

勝手に手をつけられては..」


「zzz..。」「え?」

ウソだろ、普通に寝てる。

..てことはコレ、眠りのカリスマ?


「自分で出来るならワザワザ来んなよ..」

家に帰ったらスッキリしていたで御座る。


今日の忍法

『狂い咲き、眠り草』

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