恋愛相談から始まるラブコメ
大官めぐみ
第1話 ある夏空の下で
放課後の代名詞ともいえるバットでボールを打ち上げるカキーンと言う音が聞こえてくる。
そんななか俺、
「やっべー。こんなとこに呼び出して良かったのかな?こんな暑……くはないけど太陽光がばっちし当たっているとこでなんて……」
しかも放課後なんて、もし予定があったとしたらすんごい迷惑じゃないか!
でも、もう呼び出してしまったし……。
俺は頭を抱えてうずくまった。恥ずかしさで顔が熱くなる。
「あーもう!水でも飲んで来よう!」
呼び出した時間の二十分前だし、こんなに早く来るはずがない。三十分まえからいる俺の方がおかしいのだ。………普通に考えたらキモくね?俺。
屋上の真ん中あたりにいた俺は立ち上がると扉に向かって歩き出す。水のみ場は階段降りて右にすぐ。ゆっくりでも一分もかからないだろう。
俺がドアノブに手をかけたその時だった。
力を入れていないのに自然と扉が開いていく。
「えっ」
「えっ?」
突然風が吹き、目の前で艶がかった黒髪が太陽に反射しながら舞い、目の端でたなびいた。
「えっと……」
突然のことで頭が回らない。俺の前には呼び出していた女子がいるのだから。
いつも目で追っていた女の子が。
彼女は通れないと困ったように頬をかいている。俺は反射的に道を開けていた。どうも、と言って彼女は通り過ぎていく。すれ違いざまに女子特有の甘い香りが俺の鼻孔をすぐった。
この子は―――マジかよ・・・・・・。
成績優秀、運動神経抜群、バドミントン部に入っているのに読モまでやっている完璧という言葉がぴったりの女子だ。
正直俺とは釣り合わないと思っている。
成績はいい方だとは思っているけど彼女には劣るし、運動神経の方はバスケ部だったけど入部して速攻腕折って退部。クソすぎる……。
そんなことを考えている俺に容赦なく太陽の光が刺してきた。五月だというのに暑い。さっきまで暑くなかったのに。
振り返ると彼女はキョロキョロと周りを見渡している。俺たち二人のほかに誰もいないことが分かると俺にまた、困った顔をしてきた。
「えっと、……」
「質問一ついいですか?」
「ほえっ?」
自然と俺の口からそんな言葉が出てきていた。あまりの衝撃で言おうと思っていた言葉が全て飛んでいる。
しかし俺はそのまま続けていた。
「まだ、時間には早いと思うんだけど――二十分前だし。どうして?」
「あっ、君でよかったんだ」
良かった~と胸をなでおろした彼女は真剣な目でこちらを見据えてくる。その漆黒の瞳は俺をしっかりと映していた。
「大事な話、があるって言われたら、それがどんなことでも相手と向き合うのが筋だと、私は思うからだよ」
「……」
「カッコつけすぎちゃったかな?ハハッ、ドラマの見過ぎかも」
「……」
「……」
「…………」
「なんか反応してよ」
困った顔をされる。彼女の瞳の中に自分がいたのに気付いた。目の水分のおかげで俺の姿が揺れている。
「それで用って何かな?まだ早いけど」
「ああ、えっと……」
言えない。自分が言おうとしていたことはなんというバカげていたことだったと思い知らされる。
もし付き合えたとしても自分が自分でふるまえる自信も何もない。こんな想像するのもおこがましい限りなんだけど……。
そんな葛藤の中彼女は俺の言葉を待っている。
言いたいけど言えない。
でも何か言わないと、空気が……!
そんな時俺の口からとんでもない言葉が飛び出してきた。
「俺さ、好きな人がいるんだ」
「……うん」
後で聞いたが彼女はうつむき気味に返事をしてくれていたらしい。恥ずかしくてまったく彼女を見れていなかったからだと思う。
「俺、俺さ」
「うん」
「………君の前の席の
「ほえ?」
「あっ……」
五月の中旬、まだそんなに暑くなく、しかし暖かい今日この頃、俺、茂木隼人はとんでもない過ちをおかしてしまったらしい。
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