カラス

バブみ道日丿宮組

お題:俺のカラス 制限時間:15分


カラス

 ペットとして一般的によく飼われるのは、猫や犬。あるいはハムスター。もしくはモルモット。

 友だちの家では、ウサギ、リス。そして爬虫類がいる。ここでいう爬虫類ってのは爬虫類なのがわかるだけで種類はよくわからない。

 まぁ……それは猫とかも同じかもしれない。

 三毛猫って名称を知ってるだけで、具体的ななにかを知ってるわけでもない。

「なぁ、うまいか」

 うちにいるのは、一羽のカラス。

 当たり前だが、野生動物を捕まえてきたわけじゃない。雛の状態で引き取って一緒に暮らしてる。俺のことは親か餌係と思われてることだろう。

 そういう感情が欲しくてそうしたわけじゃないが、

「……そうか」

 カーカーと甲高い声が返ってきて、それだけで胸の中がじーんと温まった。

「……うん」

 頭を撫でると、すりすりと指にすり寄ってくる。

 ほんと可愛いやつだ。

 それはみんな飼ってないのが不思議に思うくらいに思うほど。

 でも……。

 それはペットや家族ならではアタリマエのことなのかもしれない。

 実家は……いいことはなかった。腫れ物に触るような扱いを受けてたこともあるが、味方という味方がいなかった。

 有名人の隠し子として産まれたからというのもあるかもしれない。

 望まれて産まれなかった。

 ただそれだけでいないように扱われるなんて、ほんと人間はわがままな動物だ。

 この子に接する俺のようにできなかったのだろうか。

「……はぁ」

 実家から逃げるように出て、はや数年。今どうなってるだろうか。

 家出少年として行方不明者扱いを受けてるのだろうか。

 住民票の移動なんかしたりしてるから、生存確認は簡単のはずだ。

 つまり……そんな扱いはされてないということだ。

「おかえり」

 鍵を開ける音が聞こえた数秒後、同居してる彼女が入ってきた。

「ただいま。今日もいい子にしてたかな」

「うん、ちゃんと餌も与えたんだ」

「そっか」

 そうして、彼女は着替えてカラスの頭をなで、俺を抱きしめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カラス バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る