売られた扉

バブみ道日丿宮組

お題:アブノーマルな扉 制限時間:15分


売られた扉

「ピンクの扉ってなんだかえっちな感じがしない?」

 量販店のあるエリアで少女が二人。

「それって、赤だと危険っていうやつのに近くない?」

 たくさんの扉を見つめる。

 そこは他と違って異質だった。扉だけしかないからかもしれないが、空気が違った。木の匂い、コンクリートの匂い、プラスチックの匂い。そして化学物質の匂い。

 普段かげないようなものが宙を舞ってた。

「そうかも。赤信号は渡っちゃダメだし」

 うんうんと、ツインテールの少女が頷く。

「赤信号、みんなで渡れば怖くないって昔言ってたよね?」

 短髪の少女が首を傾げた。記憶にあるのは教室でみんなに語る少女の姿だ。そのあと教師が入ってきて、青信号で渡るように。赤信号では絶対渡らないようにさんざんと注意されてた。

「あれはなにかテレビで見てたから自然と国にしちゃってたんだと思うの」

「そうなの? みんなに強要しようとしてたよね?」

「違うよ。知った知識をみんなに伝えたかったんだよ」

「……そうとは思えないけれど」

「だって、実際そうじゃない? 50人ぐらいがさ、一度に横断歩道を渡るの。それはもう道と誤認するかのような」

 うーんと、短髪の少女は唸る。

「危ないことには変わらないと思うよ。死んじゃったら全てが終わりだし……」

「だからこそ、みんなでやる必要があるんだよ。壁みたいになってれば、車は止まるでしょ?」

「止まらないから事故が起きてるんだと思うよ。まぁ何にしてもここにきた目的を果たさないとね」

 そういって、短髪の少女は赤い扉のノブを回して開いた。

「扉なんてどれも一緒だと思うけどね」

「施錠の仕方も違うし、なにより防犯として役立つかどうかが大事だよ」

「じゃぁ、普通のでいいんじゃない? 赤とかピンクとか黄とか目立ってもしかたないし」

「目立ったほうが人目を引きやすいから防犯になりそうだけどね」

「うーん、そうかなぁ」

「そういうものだよ。まぁほんとうにそうなのかは調べてみないことにはわからないだろうけど」

 あははという笑い声。

「一生モノだから、そんな曖昧な言葉で誘惑しないで」

「そういうつもりはなかったんだけどね。ここらへんが無難かなぁ」

「そうね。値段もきりが良い。でも、なんで引っ越すたびに扉が必要なのかしらね」

「そりゃ新しい部屋の扉が取り外されるからだろうね」

「見に行くときにはついてたじゃない」

「それはあれだよ。ゴミとか人が入らないようにしてるだけで、住むように置いてあるわけじゃない」

「ふーん。そうなの」

 そうだよとまた笑った短髪の少女は、近くの店員に声をかけるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

売られた扉 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る