第18話
神格化。
アルペの得意とする魔法の一つであり、神聖が強い者が習得できる魔法。
人が神になることは難解である。
だがしかし、それらを簡易的にする、禁忌に近しい魔法なのだ。
そして、強制的ではあるが、神に成った者は圧倒的な膂力を得られる。
それは、等しくあまねく力を増強させ、一時的ではあるが神となったものは優越感を得られる。
そこは麻薬に通ずるものがあるかもしれない。
だがしかし、圧倒的な力を得たところで、所詮それらは真似事にすぎない。
真の神の。
よって、元来の神には、何ら敵わないのである。
「…き、さ、まぁァァァ!」
「よせ!」
エーデルガンドの一人は激情駆られ、突進する。
が、しかし。
「馬鹿ねぇ」
女神は笑みとともに、手刀でエーデルガンドの一人の首元を貫く。
どす、と鈍い音がした。
「──馬鹿が」
と思ったその時だった。
女神の後ろから、殺したはずのエーデルガンドの一人が現れ、女神へと猛攻をする。
「…てめぇッッ!」
女神も拳で応じる。
女神だから、と言って侮ってはいけない。
体術のレベルも非常に高い。
拳と拳が幾度かぶつかり合い、その度爆風を巻き起こす。
瓦礫が舞い上がり、地面はより一層激しく割れる。
「!?」
その時、女神は横腹に痛みを感じる。
そして、気づく。
己の腹から、黄金の血が流れていると。
「なん…」
「
「
とは言え、流石は治癒の神。
己の傷を瞬く間に治す。
だが、その一瞬が命取り。
エーデルガンド達から猛攻を受ける。
「が、はっ!?」
というよりも、女神は一つ疑問に思ったことがあった。
「何故、貴様は…私が手刀で貫いたはず…!」
「…ま、さしずめ
「…な」
だがしかし、今女神は明確に自覚した。
不味い。
劣勢だ。
と。
「…く…使いたくは無かったけど…しょうがない…!
神界における、天上の鎧、天上の縦、天上の剣、天上の羽、天上の靴、天上のガンレット、幾多の高性能な装備が身を包む。
さらに、
「異界者召喚…!」
そして、異界のもの達が召喚される。
◇
「なんだぁ?今のは…」
己の目の前を豪速で過ぎ去って行った何かを見て、忍浅葱は訝しく思う。
「…アタシの目で捉えられないって、どーなってんのさ」
浅葱は動体視力には自信があったのだが、今のは何かが通り過ぎていった、という認識しか出来なかった。
「…浅葱?」
伊藤徹に呼ばれる。
「…な、なんでもない」
「そうか」
…。
忍の前に居るのは、佐々木と最上。
冒険者の組合へ来たのは、B,A,S,SSランクの者たち。
「…で、現実的な話、俺たちこれからどうやって生きていけばいいんだよ…」
「んー。街に出るとか…まぁでも、女神様がなんでもやってくれそうな感じはある」
「…んー、それでいいのかなぁ。それってヒモみたいじゃないか」
「生きることに手段を選ばないといけないのか」
「確かに。でも自分たちだけで生きていけるようにする手段を考えておくのは大事では?」
橋口京子がそこへ口を挟んだ。
「それはそうだな。特に俺たちはランクが上と言われてしまった。本来は平等であるはずなのだが、まぁ、俺たちが率先して下のものたちを守ってやらないとなー」
最上が遠くを見て言う。
「はぁ、弱者を守るぅ?…何を戯言を。弱いやつは弱いままでいいだろ。別に」
「それは、強者しか言えない言葉だよ。弱者の立場で物事を考えることが出来ないのか?輝」
佐々木が強めに言う。
「…ふん、まぁいいさ。俺は楽しく過ごせりゃなんだっていいんだよ」
「楽しく過ごす、か」
それは、別にいい思うが、上手に楽しまないとなー。
と、忍は思う。
「なぁ、忍…」
伊藤が耳打ちをするように忍へ言う。
「…ん?アタシに何か」
「今さっき、何かが飛んでいくものが見えたよな」
「えぇ」
「…何だったか分かるか?」
「いや…?全然…黒い何かにしか見えなかったわ」
「そうか…俺は女神様に見えたんだがな」
「え?」
忍が驚いたのは、その動体視力の高さ。
第一、自分以外の人があれを認識しているのが不思議でさえある。
「でも、女神様が何故……」
そして、そこで異変は起きる。
「…はっ?」
全員。
恐らく召喚された者たち皆に、再び、召喚された時のような光の文様が足元から浮かぶ。
唐突に。
「な、ん」
そして、とてつもない重力のような、圧力を上から感じる。
「ぅ、ぉ、お!?」
忍の視界がガラリと変わる。
「…は?」
そこは、瓦礫の上だった。
そして、その瞬間、忍は恐怖のあまり、逃げ出しそうになった。
なんという殺意の塊のようなものだろうか。
そんなものが常に向けられている。
何となくだが分かる。強さの格が違う。
「…め、女神様…!」
女神は満身創痍…という程でもないが、身体にダメージを負っているようであった。
また召喚したのか、と忍は思う。
「…あなた達…逃げなさい…!
そして、忍の視界はさらに変わり、若干吐き気を催す。
視界が目まぐるしく変わりすぎたためだ。
そして、真夏の日差しのようなものが己の身体を妬いているのがわかった。
「…って、何ここ…」
そこは、砂浜だった。目の前には海がある。
周りには誰もいない。
「どこなのここ!!????」
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