第16話

「戦法、怒涛叩解。」


「仙術じゃなくて、戦法?」 


女神は驚いた。

攻め入ってきたことではない。

そのような事態は想定済みだ。そうではなくて、なぜ、戦法・・が使えるか、だ。


仙法でもない。


「…ふむ」


治神ヒーラ。年齢不詳。

但し、恐ろしく長い悠久の時を過ごしているのは事実。

また、歳を重ねるにつれ、知識も増えていく。


治癒の女神、治神ヒーラはその莫大な知識の中から、戦法・・を思い出す。


「…」


女神の相手は最高位騎士、エーデルガンドが五人。


それから、


「漆黒の魔法使い…か」


反耳長族ダークエルフ…いや、


闇妖精ダークエルフ…か」


妖精の里へ行くと分かるが、耳長族エルフの真名は、森妖精エルフである。


そして、その中でも、驚異的な魔法を使える闇妖精ダークエルフ


(厄介ね…)


女神は内心毒づく。


もともとこの事態を想定し、召喚した者たちはみな逃がしたのだが。


と、考えていると、エーデルガンドの一人が戦法を使い、女神に攻撃してきた。


「ま」


いいかしら、と。

女神は微笑んだ。


何。


私に攻撃できるものは、いない、と。

そうたかをくくっているのだ。


何故なら、通常、神に攻撃を通すことは不可能だからだ。


創造されたものは、創造した者を倒すことができない。


それに、女神はあらゆる魔法攻撃と物理攻撃を防ぐ。


故に、


(まぁ、見てあげましょうか)


エーデルガンドの一人、黒髪の男は戦法を使い女神へと攻撃する。


それは、思い出そうとしたがそもそも記憶になかった、女神の知識にもない技である。


「…」


とは言え女神も馬鹿ではない。


流石に自分の知らない技には警戒する。


「…?」


疾風の如き拳が女神へと降り注ぐ。


「…はぁ、ほんとうに」


呆れたようにそれを手であしらう女神。


彼女にとってみればそれは止まって見えた。


のだが。


「…ぶふっ!」


黄金の血が口から漏れる。


「…は?」


女神の血は黄金の色である。


「…」


(攻撃は直接食らってはいないはず…!?それに私は人間種の物理攻撃は全て無効なはず………!?まさか!)


最高位騎士、エーデルガンド。


一体誰が、それが人である・・・・と言っただろうか。


「…ぶふっ…!亜神か!」


それは、女神から見ればすぐに分かった。溢れ出す神聖の力。


亜神種であるというのは見てすぐわかった。


「ぶ…」


どろりと喉の奥から熱い液が溢れ出す。


生命の泉とも表現されるそれは、人が浴びればすぐさま再生するほどのものである。


黄金の血は価値が高く、1ミリリットルでも数百万円単位で売られるほど。


「…」


亜神。

半神ではない。半神は人が神に成った姿。


亜神は神と人の間のもの。


要は、


「この、出来損ないがっ!!」


女神の目が見開かれる。


額から赤き瞳が出現。


女神の第三の目アイズオブサード


効果。

人間種に対してのみ、石化、即死、反重力を与えることが可能。


追加効果。

女神の全体的な能力の超向上。


「…貴様、一体何の亜神だ…?」


「お前に教える義務はあるまい」


「…そうか。」


……?


待てよ。


何か、違和感を感じる。


「…あの、闇妖精ダークエルフ…!」


…エーデルガンドは、まさか!


「ありえな」


「五柱発動型捕縛術式展開」


五人のエーデルガンドが女神を囲い、猛攻。


すぐさま、次元転移ディメンションテレポートを使用しようとするが。


「…どうして?」


発動せず。

予めあの小娘ダークエルフが転移阻害をかけていたのか。


「いや、それよりも…!」


あの小娘ダークエルフ…!そういうことか。



「だから、闇妖精ダークエルフではなく、反耳長族ダークエルフなのね」


天才魔法使い、アルペ。


そう。これは、単純なパワーの話になるが。


まず、体術に関して、一対一で勝つことは、片方が強大であれば、容易にその片方が勝利する。



では、三対一ならどうだろうか。


その場合、仮に相手が一般、普通程度のちからであっても、強大な力をもつものの勝率はぐっとさがる。


およそ、三割から、四割まで。



そして、相手が五人にもなれば、それは、ほぼ勝率がない、とも言える。


だがしかし。


そんな状況を簡単に変えることができるものが存在する。


そう。武器である。


武器を使えば容易に殺戮が可能だ。


剣というまず斬り殺すものが出来て、銃という殺戮の象徴のようなものができた。


或いは、爆弾など。


そうして、大量虐殺が可能になった。一個の個体値、能力値など関係なく。


だがしかし。


その武器さえくつがえすものがあった。


武器に体術がかなわないように。


それに武器はかなわない。


それこそが。


「魔法ーー」


エーデルガンド五人の体が光る。


闇喰ダークイーター


黒き蛇のようなものが、現れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る