大凶でも異世界で無双できますか!?

Reign

第1話 これが、噂のあれですか!?

 僕の名前は北島 悠真中学三年生だ。


 非常に平凡である僕のスペックだが、そんな中、世は『受験期』に入っていた。

周りの友人達とも遊ぶ機会がなくなり、

もちろん僕も勉学に勤しんでいた。

最初に言おう。 僕は勉強ができない。

こんな僕でも元から勉強ができなかったわけではない。

アレは遡ること2年前、入学直後のことである。

「はい、じゃあやっていくわよ〜

教科書 ノート ワーク ファイル 忘れ物ある人ー」

数学教師の甲高い声に嫌気が差しながら授業に臨んでいた。

小学校の時から大して得意な訳では無かったが、算数はわりかしできていた。故に僕は、少し余裕をかましていた。

「なあなあ、悠真。お前勉強できるだろ。

俺に教えてくれよ。」学年で下から1、2を争う学力の小林が顔面蒼白で言ってきた。

どうやら、2ヶ月後の定期テストで平均点以上を取らないと、愛用のゲーム機を没収されてしまうらしい。

「大丈夫だろ、定期テストだなんて。

たかがテストだぞ、どうにでもなるって。」

「本当にそうかなー 

でもお前なら俺の頭の悪さ知ってるだろ昔からの仲なんだし。」

「何度も言うが俺とお前は幼稚園から一緒だが、そんなに仲が良かったことはなかったぞ。

いいように友達とか言うな。」

俺が軽くあしらうと、小林は実に残念そうな顔をして、そこからいつもの無邪気さを取り戻し「確かに悠真の言う通りだな。何とかなるかっ」

「まぁ、やれることはやっておけよ!」

「OKだ。困った時はお互い様って言うし、そん時はよろしくな。」

小林はそう言うといつも話しているゲーム仲間の所に戻っていった。

(果たして僕がアイツに助けられたことなどあったものだろうか)そう思いながら僕は大好きな異世界転生系のラノベを読んでいた。

 実は悠真は小6の時に、久しぶりに会った幼馴染がラノベを読んでいたのがきっかけとなり悠真自身も重宝する様になっていたのだ。

特に異世界転生系は大好物で持ち歩いていないことは無いと言えるだろう。そんなこんなで現を抜かしていた、中学校生活も既に終わりに近づいて来ていた。

 

 ちなみに、あの後スタートダッシュ出来なかった悠真は、なんと小林よりも頭が悪くなってしまっていた。俗に言う「初めの一歩を踏み外した」感じだ。しかも元々要領のいい小林だ、ある程度勉強は努力し続け彼女まで作り、まさに最高の青春ともいえる中学生活を送っていた。

そしてなんと、小林は彼女と一緒の高校の推薦まで決まっているらしい。何という将来安泰。何という『幸運』だろうか。

悠真は昔からとても運が悪く『不運』には定評があるような人間だった。

「あ〜、なんで僕は昔からこうも不運なんだ。」

 塾からの帰り道、疲弊した体を引きずるように歩きながら、胸中で全力で叫んでやった。

あと一歩間違えれば、夜に駅前で叫んでる頭のおかしい人間になりかねなかった。

駅に着き、中にあるベンチに腰をおろした。自分史上最大級のため息をかますと、自分の体がどっと重くなるのを感じた。

その時だ、聞き覚えのある声がしたので、声のした方を見てみると、なんと小林とその彼女の西村沙耶香がいるではないか、なんとなく疲れていて会いたくなかったので、とっさにいた場所から離れようとすると、案の定というか見つかってしまった。

「あっ、悠真じゃん。お〜い、ゆーうまー」

「げっ、なぜバレたんだ。」

「だって、俺たち友達だろ!」

「だから、その都合のいいときだけ友達とかいうのやめろよ」

「え〜、なんだよ。つれないな〜」

理由になってない理由を語り、遠くから話しかけなら近づいて来る小林。

いつものことだが小林は基本声がでかい。なので、駅でいつもより大きい声を出したものだから、周りがこっちを見ていた。

「おい、もうちょいボリューム抑えろ。」

「あっ。わるいわるい」

全く悪びれてない小林が目の前にはいた。それに、お互いが笑ってしまいしばらく笑った後、小林が切り出してきた。

「てか、そんな大荷物持ってなにしてんの?」

小林は既に高校に受かっているので、最近はずっと遊んでいる。

「あ?塾だよ塾。こっちは勉強で忙しんだ。」

小林がだいぶ呑気に切り出したものだから、すこし、感情を荒げてしまった。

「あ〜、そっか。お前大変だな。まっ、せいぜい頑張れよ」

その一言は、元々自分より勉強ができず下に見ていたが、急に彼女を作って青春まるごとリア充している男からの一言で、前から若干妬みを抱いていた、悠真からすると、逆鱗に触れるものだった。

「俺はお前と遊べるまで沙耶香と一緒に遊んで待ってるわ。」

小林は完全に僕の導火線に火を付けてしまった。

「お前はいいよな、そんな風にお気楽で今じゃ僕より勉強ができて、更には彼女がいて、進学先も一緒のとこが決まってるだぁ、この上ない幸せじゃないか。それなのに、人を煽るか。ふざけるのも大概にしろよ!」

今思えば、僕は正気の沙汰では無かった。

そう、ただただ疲れていただけなのだ。

だが、勉強のストレスとの相乗効果により興奮しているその時は、なにも考えられず思わず胸ぐらをつかんでしまった。

「ふざけんなよ。お前は昔から何かとあれば、すぐ自慢して、おちょくって、うざいんだよ。」

「は?勉強が追いついてないのも何から何まで全部お前の自業自得なんだよ。それを勝手に人に押し付けて何様のつもりだッ。」

横にいる西村は止めようとするが、2人の中に入れるような雰囲気ではなく萎縮してしまってる。


 よく考えれば、基本ベースが陰キャである僕は運動が得意ではないが、小林は得意な方である。この時点である程度わかりきってたはずだった。互いに胸ぐらをつかみ合い押し合って10秒も立たずして決着は着いた。僕は押され負け、不運なことに線路側にいた僕は線路に落ちてしまった。




「ん?どこだここ、、、街?」

見たことのあるようなないような、でも自分の住んでいた所ではない景色にパニクってしまった。

周りを見渡し1分ほど考えたあと、僕の頭の中に出てきた1つの答えは、『街』だった。

「確か、押し合って、線路に落ちて、、あっ、もしかして死んだ感じか?

そういや、小林がずっと呼んできたような。」

昔から冷静であると定評がある僕は、その頭を活かし全力で考えた。

「落ち着いて整理しよう。まず、多分僕は死んでいる。それは電車に引かれたからだろう。そして、ここはどこだ?てか、死んだのに生きてるってどういうことだ?」そこで一度深呼吸をし、近くの噴水に腰を掛けると、自分がリュックを背負っていたことに気づいた。

おっ、これはワンチャンあるのではと思い、

「とりあえず、なにが入ってたっけ」

興奮と不安が6:4ぐらいの心境でリュックの中身を漁って見る。

当然入っていたほとんどは参考書などであった。

「クソー、弁当ももう食べ終わってるしな。まぁ、水筒の中身はちょっとはあるか。」

日本では冬だったため、母が気を利かせて温かいお茶にしてくれたのだが、今いる場所は日本で言う夏のようで暑かったので、進んで飲みたい気にはなれなかった。

漁っていく中、参考書の間からとある本を見つけた。最近は忙しくてあまり読めていなかったけれど持ち歩いていた、ラノベだ。もちろん内容は異世界転生系である。中3になった悠真はラブコメもレパートリーに加えていたが、基本読むのは異世界転生系であった。

「お〜開いて読むのは久しぶりかもッ!最近勉強ばっかだったからな〜」

中身にパラパラと目を通すと重大な事に閃いた。


「もしかして、ここ異世界じゃね〜〜!!!!」

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