第255話 静寂と支配

「お前、今どこに居るんだ?」

 最初に声を荒らげたのは父親だった。


『言えません』

「何でだ?、何で言えないんだ?」

『ごめんなさい』

 電話の向こう側から聞こえてくる、瑠愛の声はとても暗く弱々しいものだった。


 その声を聞いた父親は強く言えず、先程、荒らげていた声も徐々に小さくなってしまった。


『……』

「瑠愛さん、昨日話した事を話して下さい」

 聡が優しい声で会話を誘導し始めた。


『……………』


 静寂の間が広がる。


「……チッ……早く言いなさい!」

 黙り込んでいる、瑠愛に我慢の限界をむかえた余気魅が怒号をあげた。


「余気魅!……急かすな」

「!?……ごめん」

「ごめんね瑠愛さん……ゆっくりでいいですよ」


 場は完全に聡に支配された。

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