第239話 声



「と…うま……とうま!」


「斗真!」


 声が聞こえてくる、暗闇の中から聞こえてくる。

 女の子の声だ、高いくて優しい声……いつも家に居る時に聞こえていた声……心地が良くなる声が俺に向けて飛んでくる。


「……ンン」

「と、斗真!!」


 瞳が薄らと開く、そこから見えるのは明るく照らす眩しい光と目に涙を浮かべ、ポロポロと雫を流している瑠衣の姿だった。


「瑠衣?」

「斗真!、良かった……良かったよぉ~」

 瑠衣は俺に抱きついてきた、優しく温かい包容だった。


「もう……駄目かと思った……斗真…斗真!!!!」

「……」

 視界は徐々に開けていくが、そこに写る光景は瑠衣と入院部屋のカーテンだった。


(……瑠愛は何処だ)


 俺の心は囚われたままだ。

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