木のかけら


 未彩がいる。可愛い未彩。


 私は未彩に助けられた。生きるという考えを失っていた私は綺麗に洗われた。そして、食事を与えられた。誰にか…は、知らない。未彩じゃない誰か。けど、私は未彩に助けられた。私の生きる希望。


 花に囲まれている。一心不乱に誰かが描いている。


「未彩? 」


 私は尋ねる。


 女の子からの返事はない。


 軽い舌打ちの音がした。そして、そのあとに少女が言った。


「私は結花よ」


「結花? 」


 頭の中に結花という名前が何度も行っては来ては、ぐるんぐるんと廻り続ける。


 どこかで聞いたことがある、気がする。


「結花は私の何なの? 」


 少し急いだ口調で問う。


「……………」


 返事はない。


 そして、しばらくすると結花は絵を描いてた筆を置いて言った。


「私は、貴女の幼馴染よ」


 幼馴染、か。私は忘れてしまう。だから、私はスカートのポケットから木のかけらを取り出した。


 そして既に刻まれている文字の下に刻んだ。



『幼馴染の結花』、と。






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