心
「私は……美湖? そう…なの、ね。私は…美湖なのね。幼馴染の結花……誰、かな? 」
ボロボロの木のかけら……なぜこんなにも懐かしく感じるのか。木のかけらからは仄かに甘くて少しつんとするような匂いが漂ってくる。
私はしばらく木のかけらを眺めた後かけらをポケットにしまった。このかけらは私にとって大切なもの、そんな気がしてならない。
私が寝ていたらしき畳に部屋には眩しい程の日差しが差し込んでいた。一刻も早くこの部屋から逃げ出したい。私は不思議とこの日差しが嫌いだ。それに気付いた私は、窓側と反対側の戸を開けた。戸を開けると、そこには昔ながらの平屋造りと言えば良いのか、ともかく廊下がつながっていた。
「あぅっ………私の……ば……っ!」
廊下の反対側からは泣いてる…ような、誰かの声が聞こえた。聞いたことがあるような声質、私の足は自然と声の方へと進んでいった。廊下は踏む度に、キシッキシッと音を立てて軋んだ。
私は廊下の行き止まりにある一枚の戸の前で進める足を止めた。その戸は今まで歩いてきた廊下にあったどの戸よりも装飾が綺麗だった。何の花だろうか、薄紫色で花弁の先端が尖っている。花が一面に咲いていた。何があるか分からない、けど。それでも手を伸ばしていた。
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