魔法使いは呪われたまま、みゃあと鳴く
本葉かのこ
プロローグ
『しょせん、獣だ……』
どんなに着飾ろうとも、高貴な言葉を並べようとも。
首なき魔王は天を仰いで哄笑する。
『お前たちは、獣なのだ!』
魔力で空気を震わせるその声は、激しい憤りに満ちている。
千騎を屠り血で染まった黒衣を翻し、魔王は片手をあげた。
『獣ならば獣らしく、ああっ、それも無力で、泣きわめくしかない猫にでもなるがいい!』
それは呪いであった。
瞬く間に、駆け寄る者たちの姿を変質させ、誰もが逆らう意思を失う。
みゃあみゃあみゃあ、と。
戸惑い嘆き悲しむ声は、意味をなさぬ鳴き声で、なんとも滑稽だった。
その中で、一匹の灰色の猫が、怒りに震えて咆哮する。
もしも、この状況を好転させられるとしたら、その一匹だけであった。
唯一の良心であり、
呪いをとく、唯一の鍵。
しかしその後、灰色猫はこの魔法の国から放り出される。
そうして、この喜劇じみた悲劇の物語はしばし眠りにつく。舞台は転じて、現代日本へと。
ある雨の日、人間でいることをやめたい少年と出会う日まで。
呪われた魔法使いの物語は、眠る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます