第40話 絵里奈の事情パートⅡ


前回で話が収まらず、パートⅡになってしまいました。


―――――


 絵里奈の奴、あれ以来、連絡が来ていない。もう一ヶ月以上経つ。メールの一つも寄こせばいいのに。

桂を愛しているって言った事、そんなにショックだったのかな。


 絵里奈の事だって大事だ。でも桂をあんな女呼ばわりするのは、許せなかった。

でも、やっぱり、絵里奈の声を聞かないと、何となく調子悪いな。連絡してみるか。


ポケットに入れてあるスマホが震えた。桂からだ。

『お母さんといつ会える』


そう言えば、その話をされてから一ヶ月近く経つ。でも桂のお母さんに会うのは、ちょっと気が重い。でも約束したから。返事しないと。

『今度の土曜日は、どうかな』

『土曜日は、お店開けるから、その後になる。良いかな』

『いいよ』

『じゃあ、時間決まったら、また連絡するね』

『了解』


そうだ、絵里奈にも連絡しないと。

『どうしている。最近連絡ない。話せないか』



バッグの中のスマホが震えた。大樹からだ。私は、急いで廊下に出るとスクリーンにタップした。


最近連絡ないって。大樹がしてくれないからじゃない。

『大樹が連絡くれないんでしょ。いいよ。会ってあげる』


まーったく。何も変わってないじゃないか。絵里奈の奴。仕方ないか。

『無理にとは言わないよ』


なにこれ。会いたいに決まっているでしょ。

『無理じゃないわよ。今度の日曜日は』

『いいよ』

『分かった。家に行く』


早く会いたいけど、土曜日は神林さんに誘われている。仕方ないか。でもやっぱり嬉しい。大樹がいい。今度会った時、もう一度、私の気持ちを・・・。


「三橋さん、嬉しそうですね」

「えっ」

廊下の向こうから神林さんが、やって来た。

「いえ、何でもないです」

「そうですか。スマホをタップしながら、嬉しそうな顔をしていましたよ」

「そうですか」

いいじゃない。貴方には、関係ないわ。体を回して、室内に戻った。


三橋さん、後姿も素敵だな。抱きしめたい。土曜日、失敗無い様にしないと。



神林さん、モアイ像の側って言っていたけど、ここって嫌なのよね。なんかジロジロ見ている男多いし。

 今日は、色々考えて、用心も兼ねて、ピンクイエローのストレートパンツにふんわりしたフレアスリーブ。これなら、体のラインも見えないし。ローヒールの靴だから、多少走れるし。・・私何考えているのかな。まあ、いいや。


「三橋さん」

後ろからの声に

「神林さん」

頭をぺこんと下げた。


「素敵な洋服ですね。会社で見る、キチンとOLっていう感じから、とても可愛い感じです」

「ありがとう」

まあ、定番のご挨拶かな。


「この時間だと、最近公開されたばかりの映画があります。いきましょう」

「いいですよ」

いきなり映画ですか。


映画は、最近公開された恋愛小説を映画化したものだった。内容は、悪くなかった。

午後四時半だ。


「三橋さん、宮下パークに行きませんか。昔の宮下公園を新しく開発したそうです。結構評判が良いようです」

「いいですよ」

前にも行っているんだけどな。


神林さん。彼は初めて見たいで、商業施設や屋上の公園を楽しそうに歩いていた。色々話しかけて来るけど、あまり興味が持てない。

知らない音楽グループの話をして、どこそこが良いんだ。とか言われても、適当に相槌打つしかなかった。もちろん笑顔でね。


「三橋さん、五時半です。少し早いですが、食事にしませんか。予約してあるんです」

よし、映画、公園散歩、次は夕食だ。びしっと決めて、三橋さんを振り向かせるんだ。


「えっ、夕食ですか。ちょっと待ってください。その予定じゃなかったので」

「・・・」

ショックな顔をしたと思ったら寂しそうな顔になった。

「分かりました。少し待って下さい」


神林君に背を向けると

「お母さん、今日外食する」

「あっ、うん。遅くはならない」

スマホと閉じて

「大丈夫です」

少し、ニコッと笑うと、急に明るい顔をした。神林さん、気持ちが直ぐに顔に出るんだな。


「マスター。来たよ」

「いらっしゃいませ。神林様。お待ちしておりました」

「三橋さん、入って」

彼に言われるままに入ると、こじんまりしたフランス料理のレストランだった。


神林さんは、ワインが詳しいらしい。私にウンチクを話して、偶にマスターと話しながら、注文したものを食べている。


「どうですか。このお店」

「素敵ですね。気取らないところがとてもいいです」

「そうでしょう。フランス料理と言っても、ボルドーの田舎で食べているご飯とちょっと洒落たフランス料理をアレンジしているんです。三橋さんと、また此処に来たいです」


赤ワイン一本を一人でほとんど飲んでいる。舌が軽快なようだ。私は、白ワイン二杯目だけど。



「三橋さん。少し散歩しましょう」

「いいですよ」

私も、酔いが有ったので、散歩に付き合う事にした。


有名なTV局がある辺りに来ている。まだ、人も歩いている。

隣で歩いていた、神林さんが、いきなり私の目の前に来た。

「三橋さん。・・好きなんです。酔った勢いでこんな事言うのは、いけないと分かっています。でも、我慢できないんです。お願いです。付き合って下さい」


いきなり、体を抱きしめられた。驚いて、私が動かない様にしていると、私の背中に回していた手がお尻に下がって来た。目が私を思い切り見つめている。

「三橋さん・・。」

「止めて下さい」


両手を相手と自分の体の間に入れて思い切り力を入れた。離れようとしたが、力を入れられた。お尻を触られている。口が近づいて来た。


「いやー。」


大きな声を出してしまった。おかげで緩んだ相手の腕から抜ける事が出来た。周りの人が驚いて見ている。


「神林さん。二度と私に近づかないで下さい」

大きな声で言うとそのまま、急ぎ足で駅に向かった。


電車に乗ると急いで、大樹にスマホでメールした。少し待っても返信が来ない。

大樹、どうしているのよう。返事返してよう。電車が、降車駅に着くと急いで、家に戻った。


―――――


絵里奈さん。やはり、大樹ですね。


都合で次の投稿は、7月4日12時になります。済みません。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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