幼馴染と花屋の娘

@kanako_01

第1話 プロローグ

社会人一年目の主人公が、妹と幼馴染との平穏な生活の中で、同じ会社の同期の女の子からのアタックとちょっとしたことで知り合った花屋の娘への恋心を描く作品です。


NTRもざまぁもありません。


ホンワカ恋愛事情です。


登場人物紹介は、順次ということで。


-----


「疲れたな」


 周りを見てこちらを見ている人がいない事を確認すると大きく手を上げて、息をしてエレベータに向かった。

 このビルは、十階から下が一般店舗。十一階から上がオフィスになっている。

一度十階まで降りて、セキュリティチェックを通ってから下の階に行くエレベータに乗らなければならない。


さて、今日は予定も無いし、まっすぐ帰るとするか。

一階に降りるエレベータに乗ろうとした時、


「広瀬君」


誰か、自分の名前を呼んだ気がするが、まあいいや。関係ない、関係ない。


その声を無視して一階に着いたエレベータを降りて、ビルの外に出ようとすると


「広瀬君。ねえ、ひろせくーん」


うんっ、誰?

後ろからの声に振り向くと


「やっと気づいてくれた。広瀬君。もう仕事終わり?」


見れば分かるだろ。帰る雰囲気出てないのかな。


 よく見ると、同じプロジェクトの緑川恵子だ。柔らかい茶色に染めた髪が、背中の中ほどまである。目鼻がはっきりしていて細面、まあ、世の中美人の部類に入るんだろう。

 仕事では、上下関係なしに自分の考えをはっきり言う彼女だが、その容姿で得をしている分は多い。まあ、僕には関係ないが。


「あっ、緑川さん」


「あっじゃなくて。さっきから声を掛けているのに。無視して・・」


「えっ、そうでしたか。それは、失礼しました」

分かっていたけど、面倒だし。事務的な返答を返すと


「ねえ、この後、予定ある。なければ、ちょっと寄って行かない」

「寄って行くって、何処へ」


彼女は時計を見ると

「簡単に・・ねっ」


 これはお酒の誘いか。プロジェクトの仲間と何回か一緒に行っているからいいか。

頭の中で、この後の事を考えると・・何もないし。あっ、妹には、夕食いらないって連絡しないと。


「ちょっと待って」

スマホを取り出して

『今日、夕食いらない』

『えっ、もう少し早く連絡して。もう半分作ってしまったのに・・。誰と?』


最後の言葉に、これは怒っているな。

『ごめん、会社の同僚』

『男、女』


えっ、なんでこんなこと聞いてくるの?

まずい・・

『男・・プロジェクトの仲間』


少しの時間の後、


『そうか。分かった。遅くならないでね』


お前は僕の母親か・・了解のマークを絵文字にして送るとスマホを閉じた。


「大丈夫。じゃあ行こうか」

「うん」

嬉しそうな顔をする緑川さんが横に並ぶと、一緒に歩きだした。


§ § §

あれは女だな。男の同僚とか言っていたけど、男だったら、簡単に電話してくる。

チャットにしたのは、男じゃないから・・

目の前に既に下ごしらえを終えた、肉と野菜たちを見ながら

「まあ、仕方ない。明日食べてもらうか」


大樹の妹、麗香は、仕方なく自分の分だけ残して、後の具材は、冷蔵庫にしまった。


§ § §


「何処に入る」

「まあ、この辺は会社の人多いし、渋谷当たり行かない。広瀬君の家って田園都市線沿いでしょ」


 えっ、なんで僕のプライベイトなこと知っているの。人事くらいしか知らないのに。緑川さんの顔を驚いた顔で見ると


「なんで、私が、広瀬君の帰りの電車知っているのって顔している」


大きな目でじっと大樹を見ると

「前の飲み会の時、先輩達と話していたじゃない。ちょっと記憶に残っている」

「そっ、そうなんだ」


この子、記憶いいな。気を付けないと。


渋谷に移動して、二時間位飲んで、結局もう九時を過ぎていた。

会話の内容は、同僚の事、仕事の事、上司の事など、彼女に関わる人の噂や愚痴半分。僕はあまり興味ない事だった。

お酒の席で、それも二人きりの時に、仕事の話はないと思うけど。


「渋谷駅まで送っていくよ」

そう言うと緑川さんは、僕の顔をじっと見て、下を見ながら

「なんだ、帰るのか。初めてをあげようと思ったのに」


最後は聞き取れなかったが、上げた顔が真剣で、じっとまた僕を見ている。


「いいわ、帰りましょ。送って、駅までね」


§ § §


地下鉄から地上に出ても、真っ暗な外の景色を見ながら

いきなりは無理だよね。会話うまくできなかったな。共通の話題も無いし。あれを話す事出来ないし。でも、時間無いし。彼でないと嫌だし。・・・


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面白そうとか次も読みたいなと思いましたらぜひ★★★頂けると投稿意欲がわきます。


お願いします。

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