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行方不明者発見の報告をすると、通信機からは指定のポートまで送り届けよとの指示が返ってきた。
「近くにもポートはあるはずだが?」
『そちらの〈訪問者〉はS級サーバの住人です。専用ポートからのみ帰還が可能となっています』
「データのやり取りはサーバの中でやればいいだろう」
『規則ですので』
人間なのかAIなのかわからない口調でオペレータは言った。この言葉が出ると、もう何を言っても無駄なことをカウボーイは知っていた。彼は小さくため息をつき、専用ポートの位置を訊ねた。返ってきたのは現在地から半日かかる場所だった。老カウボーイは聞き返したい気持ちを押しとどめ、了解の旨を伝えて通信を切った。再びついたため息が、冷たい風に流され荒野に消えた。日が、山並みに向かって高度を下げつつあった。
「言っておくけど」と、馬上から声が降ってくる。「わたし、まだ帰るつもりはないわ」
カウボーイはポラックに跨がる少女を見上げた。
「言っている意味がわからないんだが」
「そのままの意味よ。まだポートには連れて行かないで」
「だったらどこに行けばいいんだ?」
「花を探しているの」
「花?」
すると通信機を通して、少女が情報共有を求めてきた。許可すると、カウボーイの視界に一枚の写真が現れた。それはどこか山間の風景で、谷底に白い花の絨毯ができている。
「そこに連れて行って」
「馬鹿言え。逆方向だ」これから半日がかりで目指さねばならない場所は、ここから見える山を背にして進んだ先にある。
「そこに行くまでは帰らないわ」
「またの機会にするんだな」
明かりのあるうちに少しでも距離を稼いでおきたかった。それに寝床を探す必要もある。カウボーイはポラックに命じ、遙か彼方のポートを目指して歩き出そうとした。
地面の何かの落ちる、重たい音がした。
思い当たるものは一つしかない。振り向くと果たして、片足を失ったファーボが、乾いた土の上を這っていた。
カウボーイはまた、ため息をついた。
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