架空戦史・日輪の軌跡~~暁の水平線~~
駄猫提督
第一章:東亜太平洋戦争
第1話:日輪の落日
1941年12月8日未明、大日輪帝国は海軍機動艦隊(南雲艦隊)によってコメリア合衆国準州、ハロイ諸島、オフス島の翠玉湾(エメラルドハーバー)を奇襲し敵主力艦隊の殲滅に成功する。
その後、日輪陸海軍は破竹の勢いで連戦連勝を重ねた、そして戦争の早期終結の為に連合艦隊司令長官『
ミッドラン諸島は3つの大島と5つの小島が並ぶ環礁域であり、米航空基地が存在し現在も増設中であった、その為、日輪軍は大艦隊を以て是を占領、若しくは破壊、そしてそれを護衛する米機動艦隊を撃滅せしめ、米国の太平洋の前哨基地であるハロイ諸島を占領し其れを以て和平交渉へと繋げる算段であった。
1942年6月6日未明、山本司令長官の思惑を乗せ、北太平洋を驀進する大艦隊は南雲機動艦隊、空母
4隻の空母はどれも全長300
そして飛行甲板前部からせり上がって来た昇降機には鳥の
その形状はこの時代に在って現代ジェット戦闘機のそれで有り、その容姿は航空自衛隊のF2に似ていると言って差し支え無いが、外観で大きく違うのは機体に
F2に似た外見を持ちながらも機体下部に
然しそれは当然であり、この世界の軍用機の殆どは
「ふむ、そろそろだな、敵機動艦隊は発見出来ず、か、ならば予定通り、攻撃目標をMIと定める、第一次攻撃隊、九七式爆装隊の出撃準備急げ!」
懐中時計に目をやり南雲機動艦隊旗艦赤城の艦橋で指示を出したのは、他でも無い、日輪海軍第三艦隊司令官『
南雲の指示を受けて各航空母艦の飛行甲板は慌ただしくなる、[九七式艦上攻撃機]の爆装を最終点検し、直援機である零戦を空に上げる為である、因みにこの世界の艦上機には雷撃機、爆撃機と言う区分は無い、したがって九九式艦爆は存在せず、雷爆両方を運用する場合は九七式爆装隊、九七式雷撃隊と言う略称が使用される。
日輪海軍艦上攻撃機、通称九七艦攻は最大速力720㌔、搭乗員は3名で武装に後部12㎜機銃1門を常設しており、主武装は800㌔蒼燐爆弾1発或いは300㌔蒼燐爆弾2発若しくは50㎝航空蒼燐魚雷1つを搭載する。
そして日輪海軍が誇る常勝無敗の零式艦上戦闘機、通称
「南雲司令、各艦より、出撃準備完了との事です! 常勝無敗の南雲機動艦隊の力、鬼畜米帝に見せつけてやりましょう!」
拳を握り締め目を輝かせるのは南雲艦隊参謀長『
「ふむ、一航戦、ニ航戦共に第一次攻撃隊順次発艦! 敵航空基地を破壊せよっ!!」
南雲の号令を受け、月光に照らされる飛行甲板から次々と
・
・
・
南雲機動艦隊後方約300kmには山本司令長官率いる主力艦隊が展開していた。
最新鋭戦艦
その為主力艦隊は多数の駆逐艦や巡洋艦に守られており艦隊後方には海軍陸戦隊の上陸部隊が追従している。
戦艦長門は長年連合艦隊旗艦を務めてきた世界ビッグセブンに数えられる優秀な艦であるが流石に20年の差は歴然である為、戦艦紀伊にその座を譲った。
しかしそれでも全長320
たがやはり最新鋭であり全長370
因みに、この世界の艦艇は排煙を必要としない為、煙突が存在しない。
その為、艦橋は艦体中央にあるのが普通であり長門や扶桑もその例に漏れてず真横から眺めると綺麗な山形を形成しており美しい。
紀伊は艦体やや後方に設置されている為、山形は崩れてはいるが艦体とのバランスが取れているので其れはそれで美しいと言えるだろう。
また艦橋は前艦橋と後艦橋が合わさっており、マストが前後どちらからか伸びていると言う設計を用いているがこれは艦型や国家によって若干の違いが有る。
「そろそろかな?」
戦艦紀伊の艦橋内で備え付けられた椅子に座りそう呟いたのは連合艦隊司令長官山本五十八海軍大将である、少し恰幅の良い温和そうな雰囲気を持つ軍人然としていない人物である。
「そうですね、米機動艦隊が発見出来ていれば良いのですが……」
山本の呟きに返答するのは連合艦隊副指令『
現在艦隊は無線封鎖をしている為、余程の緊急事態でなければ通信や電文が入る事は無い、便りが無いのが良き便り、と言う事である、しかし逆にもし何らかの通信や電文が入る事が有るとすればそれは予想外の事態が起こったと言う悪い知らせであると言える。
そして数時間後、紀伊の通信兵は飛び上がる事になった。
「ちょ、長官!! た、大変です! 赤城が敵艦載機の爆撃にて大破炎上との電文が……っ!!」
「 「 「 「 「 ーーっ!? 」 」 」 」 」
その通信兵の言葉に紀伊の艦橋内に戦慄が走った、常勝無敗の南雲機動艦隊、敵を発見さえ出来れば撃滅したも同然、そう思っていた、然し電文に載っていたのは【アカギ テキ カンサイキ ノ コウゲキ ウク タイハ エンゼウ】と言う信じられないモノであったのだ。
そして山本の悪夢は続いた、
「……っ! 長官……」
伊藤が沈痛な面持ちで山本を見る、山本は椅子に座ったまま目を伏せ何も語らない……。
その後、単艦で奮戦した飛龍の活躍で米空母ヨークタウンを撃沈したものの、反撃にあった飛龍は米艦載機と基地航空隊の総攻撃を受け爆沈。
魚雷を受け大破した蒼龍も浸水が激しく沈没。
加賀は弾薬庫の爆弾に引火し大爆発を起こし轟沈。
赤城は最後まで浮いてはいたが航行不能で有った為、駆逐艦
常勝無敗を誇った南雲機動艦隊は初の敗戦で主力空母4隻と熟練操縦士を失い、事実上壊滅した。
この戦いで有能な士官もまた多く命を落とし、南雲中将も赤城と運命を共にした、空母以外の損害は軽微であり重巡
無敵を誇った南雲艦隊のまさかの大敗の原因は難しい決断を迫られた結果の判断ミスと、そして慢心であった。
ミッドラン基地への第二次攻撃隊の爆装準備をしていた矢先、駆逐艦
その為、急遽攻撃隊の爆装を雷装に変更していたが、その時甲板上に取り外した爆段が放置されたままになっていたのである。
そして直援機の零戦を上げようとした時、第一次攻撃隊が帰還して来た、もし発艦を優先すれば帰還して来た友軍機は動力切れで墜落する、だが、着艦を優先すれば敵機が襲来して来た時に無防備となる、南雲司令も悩んだが、同胞を見殺しには出来ないと着艦を優先させた。
そしてこの時、あろう事か南雲艦隊は対空警戒を怠っていたのである、既に米攻撃機は南雲艦隊の眼と鼻の先にまで来ていた、先の電文を送った磯風が後を付けられ、艦隊の場所を特定されてしまったのだ。
それを知らない日輪主力空母4隻は着艦作業に集中し、敵機襲来を知った時には既に目視距離にまで迫られ、一方的な爆撃を受けることになり、飛行甲板に爆弾を放置していた赤城と加賀は瞬く間に火達磨になってしまった、そして結果は周知の通りとなったのであった……。
「連合艦隊司令長官より全艦隊に達する、現時刻を以てすべての指令を破棄、全艦直ちに
山本が静かに言葉を発すると伊藤が復唱する様に声を張り上げ指示を出す、山本の心情では『転身』では無く『撤退』と言っても差支えなかったが、それでは納得しない艦が出ないとも限らなかったので敢えて転身と言う言葉を選らんだのである、それ程に南雲機動艦隊の大敗は日輪海軍にとって有り得ない事であった。
第一次攻撃隊の出撃から僅か3時間、此処に世界最強を欲しいままにした日輪帝国機動艦隊は壊滅したのである……。
~~登場兵器解説~~
◆航空母艦
両舷装甲10mm~100mm(最大厚防御区画50%) 水線下装甲無し 甲板装甲10mm~50mm
艦載機数62機+露店駐機18機
兵装 12㎝連装高角砲4基 35mm三連装機銃24基
装備 航空機用エレベーター2基 八九式油圧カタパルト2基
主機関 ロ号艦本八七式蒼燐蓄力炉 6基
概要:ワシントン軍縮条約で破棄された巡洋戦艦の艦体を改装して造られた航空母艦、新型の
◆戦艦
両舷装甲100㎜~700㎜一式複合装甲(最大厚防御区画70%)
甲板装甲40㎜~400㎜一式複合装甲(最大厚防御区画75%)
水線下装甲20㎜~120㎜一式複合装甲(最大厚防御区画70%)
兵装 60㎝三連装砲5基(前部3基 後部2基) 15㎝連装汎用砲12基(上部構造物両舷)
35㎜三連装速射機関砲30基
主機関 ロ号艦本九七式蒼燐蓄力炉 6基
概要:日輪海軍が煌華大陸の統治領、旅仁港の海軍工廠で建造した新型戦艦、艦容は日本海軍の大和型戦艦(最終偽装)に酷似しているが、当然ながら煙突が無い事と副砲部分が主砲に置き換わっている差異が有る、尚本艦の複合装甲とは
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