第9話 真実

「うう……」

「ファイン! 良かった、目を覚ましてくれた!」

「ディリスか……」

「あれ? あたし死んだんじゃ……?」

「どうやら生きているみたいですね……」

「ルーナ! ララ! みんな無事?」

「ディリス……なんでこんなところにいる?」

「それはこっちのセリフだよ! なんでみんなここへ?」


 ディリスが率直に尋ねると、ルーナがファインに笑みを向けた。


「ファイン、無事に角も手に入ったし、もう良いんじゃない?」

「だな。もう隠し事をする必要もねえか」

「ですね。これ以上は心苦しいですし」


 三人は笑みを浮かべると、揃って顔を向けてくる。


「ディリス。これをエリーゼちゃんに飲ませてやれ」

「えっ? い、いいの?」

「当たり前でしょ! そのためにこんな無茶したんだから!」

「そうですよ! 急いで飲ませてあげてください!」

「ねえ、みんな。もしかして僕のために……?」


 ディリスはもうわかっていた。

 それでも直接彼らから言葉を聞きたかった。


「恩を着せるようであまり言いたかないが、まあそうだな」

「でも、それならどうして……? 一緒に行ってくれれば……」

「準備は万端にしてきたけど、正直勝てる見込みなかったしね」

「はい。ディリスを危険な目に遭わせるわけにはいかないので」

「ど、どうして?」

「決まってるだろ。エリーゼちゃんにはお前が必要だからだ。間違ってもお前を死なすわけにはいかなかったんだよ」


 ディリスの目からぽたりぽたりと水滴がこぼれる。


「みんな……本当に……ありがとう……」

「おう!」

「どういたしまして!」

「はい!」

「それと……ごめん。僕はみんなのことを誤解して……恨んでた。こんなに……こんなに僕のために頑張ってくれていたのに……」

「気にすんな! そもそも、そう思わせたのは俺たちだしな!」

「そうそう。あたしたちもごめんね。そうでもしなければ、ディリスがついてきちゃうと思ってさ!」

「本当にごめんなさい」


 パーティーから追放したのも、文献の再生に成功したことを黙っていたのも、全てはディリスに危害が及ばないようにするため。

 薬となる魔物が危険度Bランクと判明した時点で、ファインたちは三人だけで角を手に入れることを思い立った。


 それがわかって、また涙が込み上げてくるも、必死にこらえる。


「しかし、お前がここに来ちゃうとはな。爺さんから文献を回収するの忘れてたぜ」

「本当にファインって詰めが甘いよね~」

「まあ、そのおかげで私たち生きているんですけどね!」


 笑い合う三人に、ディリスの頬も自然と緩む。


「よし。角が手に入ったことだし、急いで戻るぞ! 今もエリーゼちゃんが苦しんでいるはずだ」

「そうですね、急ぎましょう」

「うん、みんな本当にありがとう! じゃあ、行こう!」


 四人は肩を並べて洞窟を出た。

 そうしてノンノイに戻っている道中、ファインが申し訳なさそうな顔で話し掛けてきた。 


「ディリス……。追い出しておいてなんだが、【慈愛の剣】に戻ってくるつもりはないか?」

「辞めてよ、ファイン。聞くまでもないじゃないか」

「いや、こういうことはしっかりと言葉にしておかないとな」

「……そうだね。じゃあ、答えはもちろんだよ。これからもよろしくね、みんな!」

「ああ!」

「こちらこそです!」

「これで【慈愛の剣】復活ね!」

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