第6話 依頼の行方

 翌朝。

 ディリスは営業が始まったと同時にギルドへ飛び込み、依頼が貼られている掲示板に直行した。


「はぁ……」


 とてつもなく大きな溜め息がこぼれる。

 それもそのはず、依頼書がまだ掲示板に張られたままなのだ。

 それは昨日、誰も依頼を引き受けてくれなかったことを意味していた。


 しかし、今日こそは引き受けてくれるBランクパーティーがいるかもしれない。

 その人たちに直接お礼を伝えるため、ディリスはギルドの中央に設けられた椅子に座り、その時が来るのを待つことにした。


 それから数時間が経ち、ようやくBランクの依頼の欄を見上げる冒険者たちが現れた。


(お願い……お願いします!)


 彼らの動向を遠くから観察しつつ、自身の依頼書を手に取ってもらえることを祈る。

 しかし、彼らが手に取ったのは別の依頼書。

 ディリスが出した依頼ではなかった。


「はぁ……」


 再び溜め息を一つ吐き、新たなBランクパーティーが来るのをひたすら待つ。

 ただ、それ以降、Bランクの依頼欄の前で足を止める者は一人も現れなかった。



 ☆



 ディリスは昨日に引き続き、ギルドで依頼を受けてくれるパーティーが来るのを待つことにした。

 そうして昼を過ぎた頃、見覚えのある三つの顔が目に入った。


 ファイン、ルーナ、ララ。【慈愛の剣】のメンバーだ。

 三人は受付カウンターで笑みを浮かべ、仲睦まじげに話している。


 手続きが終わったのか踵を返すと、ディリスの前を通ってギルドを出ていった。


(三人にとって、僕って何だったんだろう……)


 声を掛けてくるどころか、顔を合わせようともしない三人に、ディリスは一人涙を流した。

 その後、気を取り直して冒険者たちの動向を眺めるも、営業終了までBランクと思しきパーティーは一組も現れなかった。

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