第6話 依頼の行方

 翌朝。

 ディリスは営業が始まったと同時にギルドの中へ飛び込み、依頼が貼られている掲示板に直行した。


「はぁ……」


 大きなため息が一つこぼれる。

 それもそのはず、自身が出した依頼がまだ掲示板に張られたままなのだ。

 それは昨日、誰も依頼を引き受けなかったことを意味する。


 しかし、今日こそは引き受けてくれるAランクパーティーが居るかもしれない。

 その人達に直接お礼を伝えるため、ディリスはギルドの中央に設けられた椅子に座ってその時が来るのを待った。


 それから数時間。

 ようやくAランクの依頼の欄を見上げる冒険者達が現れた。


(お願い……お願いします!)


 その動向を遠くから観察しつつ、自身の依頼書を手に取ってもらえることを祈る。

 しかし、彼らが手に取ったのは別の依頼書。

 ディリスの依頼は引き受けてもらえなかった。


「はぁ……」


 再びため息を一つ付き、新たなAランクパーティーが来るのをひたすら待つ。

 ただ、それ以降、Aランクの依頼欄で足を止める者は現れなかった。





 その翌日。

 ディリスは同じように、ギルドで依頼を受けてくれるパーティーが来るのを待つことに。


 そうして昼を過ぎた頃、見覚えのある人物達の顔が目に映る。


 ファイン、ルーナ、ララ。

 <慈愛の剣>のメンバーだ。


 三人はBランク向けの依頼欄の前で、仲睦まじそうに話している。

 やがて一枚の依頼書を手に取り、受付カウンターへ提出した後、ディリスの前を通過した。


 その際、三人とも顔を合わせようとすらしなかったことにディリスは深く傷つき、人知れず涙をこぼした。


(三人にとって、僕って何だったんだろう……)


 そんなことを思いつつ、冒険者の動向に目を向ける。


 しかし、営業終了まで一組たりともAランクのパーティーらしき一団は現れなかった。

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