第1話 追放
それから三年の月日が流れた。
「お待たせ!」
ディリスは息を切らしながら、冒険者ギルドの二階にある部屋の扉を開いた。
大きなテーブルには、既にファイン、ルーナ、ララの三人がついている。
孤児院を卒業した後、ディリスたち四人は約束通りパーティーを組み、冒険者として活動していた。
パーティー名は【慈愛の剣】。ランクはC。
個々の実力はそれほど高くないが、共に育っただけあってチームワークは抜群で、十六歳の若さでCランクまで昇格することができた。
「話ってもしかして!?」
「……ディリス。悪いが今日をもって、【慈愛の剣】から抜けてくれ」
「……えっ?」
リーダーであるファインからの宣告に、ディリスは耳を疑った。
「聞こえなかったか? 今日でお前はクビだ」
「クビ……? えっと、ルーナ、これは一体どういう……?」
言葉の意味が全く理解できず、ディリスは魔法担当のルーナに顔を向ける。
「だからクビだって言ってんのよ。これからはあたしたちだけでやっていくから」
「……ララ。う、嘘だよね?」
「…………」
次に回復担当であるララに聞くと、彼女は何も言わずにただ顔を逸らした。
否定しないララに、瞬く間にディリスの顔が青ざめる。
「み、みんな何を言ってるの? 僕たちこれまでずっと一緒に……。それにこの間、エリーゼの病気を治すために協力してくれるって……」
先日、妹が病に冒されたと告げた時、ファインたちは薬を手に入れるのを手伝うと二つ返事で言ってくれた。
その在り処を手分けして調べようと別れたのが一週間前だ。
なので今日の呼び出しは、薬が見つかったという朗報であるとディリスは思い込んでいた。
そんな中、告げられたのはパーティーからのクビ宣告。
ディリスの息が荒くなる。
「だから、それがうざいんだよ。エリーゼちゃんの病気は俺たちに関係ないだろ。お前が一人で何とかしろ」
「そうそう。あたしたちだって自分のことで精一杯だし」
「……ファインとルーナの言う通りです。私たちまで巻き込まないでください」
孤児院で育った、家族同然の仲間たちからの心ない言葉。
ディリスは希望から絶望へと一気に叩き落とされた。
目からこぼれた雫が頬を伝う。
「……そっか。そんな風に思ってたんだ。僕はみんなのこと、信じて……たのに……」
とめどなく流れる涙を拭いもせず、ディリスは会議室を飛び出し、その勢いのまま冒険者ギルドを後にした。
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