明石城
三十の城
私は晴れ渡る空の下、高くて長大な石垣と石垣の谷間を歩いていた。
石垣の上には白い壁が建てられていて凄く私を
道はいつまでも長く途切れないが私はずっとその道を歩き続けていた。
果てしなく終わら無さそうな道、太陽がカンカンに照り返っていて私は体が汗まみれになってしまった。
止まりたいのに止まれない。喉が乾いた。水が飲みたい。
私は手で額の汗を拭う。
もう私はこの石垣の谷間から逃れることは出来ないのだろうか。
そう思って地べたにへたり込みそうになったその時、遥か遠くに黒鉄の門を固く閉ざした
あそこに行こう、あそこなら水が貰えるかもしれない。
私は必死になって黒鉄の高麗門を目指して早足で歩いた。
遠目に見るといつ届くともわからない距離だと思えた高麗門は意外にもすぐにも到着した。
私は門を必死に叩いて
「すみません!開けてくださーい!」
と声の限りに叫んでいた。
私の声に呼応するように門がギギギギ・・・と重々しい音と共にゆっくりと開く、開いた門の
私は「パンダ!」と一声口走ると侍パンダはサッと手を挙げる。
すると侍パンダの手に呼応するように四方が石垣と壁に囲まれた門内がみるみるうちにパンダで埋め尽くされた。
白い壁や櫓だと思っていたものは全て擬態したパンダだったのだ。
息が苦しくてぎゅうぎゅうと圧迫される。
誰かこのままじゃ私、パンダの圧力で潰されちゃうよぉ・・・
くるぢい・・・
・・・
私があまりの圧力と暑さで目を覚ますと四人掛けの対面シートの目の前には
私はと言えば何故か電車のガラスに押し付けられてギュウギュウに圧迫されていた。
何故かと言えば隣の
確かに今日は朝が少し早くて電車の揺れも心地よいから椅子に座ると直ぐに気持ちの良い眠気が
それもこれも朝も早くからパンダデートのためにはしゃいでいたお母さんのせいだ。
私は学校の門の前で9時に約束をしたのだ。
家から学校までは歩いて20分程度の距離しか無い、私は8時前に起きて歯を磨いて顔を洗ってご飯を食べて準備をすれば8時30分には家を出ることができる。
そうすれば私の体はだいぶ楽だからこんな悪夢を見るはずはなかったはずだ。
一方両親は出発が早い、前日に調べたが白浜という場所は和歌山県の南部にあって、大阪から車で行くと高速を使っても2時間以上は掛かってしまう。
朝の
だからお父さんは余裕を持って7時に出発を決めた。
朝の7時出発はまあいい、戸締まりは厳重にして出発してくださいと私に書き置きしておけば済むことだ。
ところがお母さんは朝5時に起きていそいそと準備を始めると5時30分頃にはパンダに会うにはどの服装が良いとか、パンダに好かれる色は何色だとかぎゃあぎゃあとうるさくし始めたのだ。
挙げ句はパンダと一緒に写真を取る時のポーズの練習とかを始めてしまった。
お父さんもお父さんでそんな母を見て『オー!』と言ってみたりパチパチと拍手したりして二人で盛り上がりだす。
うるさくて寝てもいられないので部屋から出て両親に苦情を言おうとすると私も無理やりパーティーに参加させられたのだ。
私が解放されたのは結局二人の出発の30分前になって、いよいよ急いで準備しなければならなくなってからだった。
その頃には私は目が冴えてしまい、寝ようとしても暗い部屋のベッドの中でゴロゴロと寝返りを打つくらいしか出来なかった。
だから電車に乗ると自然と眠ってしまったのだ。
訪ちゃんが寝てるのはなんでかはわからないが、おおよそ私が寝たのに釣られて寝てしまったのかもしれない。
しかし、重いし暑いな・・・
私は冷房が効いた電車で寝ていたはずなのに訪ちゃんの体温で首元にたくさん汗をかいていた。
しかも窓に押し付けられて圧迫される。
私は訪ちゃんの圧力に負けないように、なんとか体を起こすために必死に押し返そうとするが、訪ちゃんは寝ていて脱力しているのに体はまるで石のように重くて動かない・・・
古来武術では脱力することで体重を集中させて突きや
私は馬鹿な事を考えながら体をバタバタと
それどころか訪ちゃんの体は私の体にどんどんと重みを掛けてくる。
「城下さん、何やってるの?面白いけど公共の場だから少し静かに寝ましょうね。」
虎口先輩は相変わらずの勘違いで私を『メッ』と
「たっ・・・訪ちゃんが重いんですぅ・・・」
私は今先輩の言葉に構っているほどの余裕がない・・・なんとか脱出しないと・・・必死になって訴えるとチョコクロワッサン、略してチョコワッサンを美味しそうに頬張っていた天護先生がさり気なく訪ちゃんの体を私から引き
チョコワッサンを口いっぱいに頬張って食べている天護先生が私には光り輝く天空から舞い降りた女神のように神々しく見えるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます