二十二の城
大阪城の下には
お寺を潰してお城にするなんて
「どうしてわざわざお寺を立ち退かせてまでお城を作ったんですかねえ・・・」
「
虎口先輩は私にも分かるように簡潔に説明してくれた。
そうかぁ、ない場所に作ったのか、それならば罰を気にすることもなくお城を建てることもできる。
「
浄土真宗って仏教のこと?
私は無宗教だし宗教についてもそこまで詳しくないから何宗って言われてもすぐにはピンとこないが流石に浄土真宗と言われてキリスト教の宗派とは思うレベルのバカではない。
「詳しくはわかりませんが仏教の宗派の一つですか?」
「
訪ちゃんはナムナムと
私は訪ちゃんのナムナムする姿で
「そっかぁ、浄土真宗って南無阿弥陀仏なんだぁ・・・」
と和んだ後、少し冷静になって考えると私は物凄くびっくりしていた。
「南無阿弥陀仏って仏教全般じゃないんですか!?」
「ちゃうちゃう!」
驚く私を見て訪ちゃんは大きく頭を振った。
「仏教にもいろんな宗派があって、特に大きなものを
虎口先輩はメガネを整えると
「念仏に南無阿弥陀仏と唱える宗派は大きなところで浄土真宗二派、浄土宗、小さな宗派で
と天護先生よりも教師らしい態度で説明してくれた。
天護先生の名誉のために言っておくと授業中は物凄く真面目で真剣だ。
「この念仏宗だけで日本には2000万人の宗徒がいてるとされていて日本の仏教は念仏宗とその他大勢と言っても過言ではないほど勢力に大きな差があるわ。こんなにも信徒がいるんだから南無阿弥陀仏と日本中の宗派が念仏として唱えると思ってしまっても仕方ないわよね。」
虎口先輩はそう言うと地層の後ろにある展示物を指して
「これが石山本願寺の本堂の模型なんだけど、模型の内部にお坊さんの人形があるでしょ?あれが
私は半分だけ屋根の無い模型の奥を覗き込むと可愛いお坊さんの人形が仏壇らしきものの前で立っていた。
「現代もだけど当時もかなり勢力が強くて、日本各地に信徒を持っていた浄土真宗だったんだけどあまりにも力が強すぎて時の権力者である織田信長に
「矢銭・・・ですか・・・」
税金と言う名目でお金を奪って自分のお金にしようとしたんだ・・・戦国時代と言う言葉にふさわしいやり方だな・・・
「その額が5000貫と言われているんだけど、単純に現在の貨幣価値で考えると1貫が100万円以上の価値と言われているからそこから換算すると5000貫は50億円以上の価値がある事になるわ。」
「50億!」
私は驚いてつい大きな声を挙げてしまった。
私達以外の観覧者も驚いて私を見てしまう、私はすぐに気づいて驚いている人に軽く会釈した。
虎口先輩は口に人差し指を当てて静かにと言う合図をする。
訪ちゃんはちょっとだけ笑っていた。
「まあ、さぐみんも声あげてびっくりするぐらいの額やったってことやねん。こんな
虎口先輩は訪ちゃんに
「しかも本願寺だけでなく本願寺の末端のお寺にも要求したのよ。流石に5000貫ではないけれど。要求を受け入れないお寺は取り潰しにしたり徹底した態度の信長に顕如上人は要求を一度は受け入れたのだけど、信長の追求は激しく、そのうち石山本願寺の明け渡しを要求したわ。顕如もついに我慢できなくなって各地の宗徒に呼びかけて信長との戦いに突入したの。」
「そうなんですか、なんかひどい話ですね。財産の次は家を寄越せってほんとに信長はメチャクチャです!」
私はなんだか自分のことのように考えてしまって怒って言うと虎口先輩は笑った。
「うふふ、そうね、めちゃくちゃね。めちゃくちゃだけど本願寺も信長を始め時の権力者たちが潰してしまいたいって思ってしまうほどの力を持っていたのも事実なの。」
虎口先輩は信長を弁護するように言った。
「昔から宗教勢力と権力者との間は争いは絶えないわ。結果顕如達信徒は石山本願寺に籠もって10年間抵抗するんだけど、最後にはお互いにこれ以上戦いを長引かせるのは得策ではないと考えて和睦したの。顕如の息子の
話が終わると虎口先輩は石山本願寺が焼けてなくなってしまったのを惜しむように本願寺の模型を見て少し寂しそうな顔をする。
きっと虎口先輩は本物の本願寺を一度見てみたかったのだ・・・
私は何故かそう思った。
「結局、顕如さんは負けなかったけど負けちゃったんですね。」
私のしみじみと言った言葉に反応して虎口先輩は我が意を得たりと頷く。
「だけど信長も顕如上人に負けたわ。」
虎口先輩は子供のような笑顔で言葉遊びを楽しんでいるようだった。
「そうなんですか?」
歴史がわからない私はなぜそう言い切るのかよくわからないが先輩が言うからにはそうなのだろう。
「顕如上人がいたから信長の天下統一の活動は
政治的には信長さんは顕如さんに勝ったと言えるけど、長い時の流れの中では顕如さんが信長さんに勝ったと虎口先輩は言いたいのだ。
歴史を伝えるにはすごく簡潔に省略してくれた話だったけど私は物凄く壮大な物語を聞き終えた気がしていた。
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