拾九の城
「私達が通ってきた
「確かにその通りですねぇ。天守は広い場所に単体で立っているのに対して大手門は建物が四角く広場を取り囲むように作られているからですかね。」
確かに上空から見る大阪城は大手門がかなり大きく主張しているように見えた。
「そうね、近くで見ても凄いんだけど、ここから見る大手門は本当に迫力があるの。特に大阪城の大手門は
「渡櫓と多聞櫓って言うのはどの櫓なんでしょうか?」
流石に専門用語が出てくると昨日始めてお城に興味が出てきた私には虎口先輩の丁寧な説明でも理解できなかった。
「渡櫓は大手門の大門の事よ。あの大きな門は渡櫓門と言って単体で独立した
なんとなく分かったような分からんような、とにかく両方廊下なんだ。
私はとにかく無理やり納得した。
そんな私を見て虎口先輩は
「今は無理に理解しなくてもいいわよ。」
そう言って微笑んだ。
「なあなあさぐみん、今観光客がたくさん大手門に入っていくやろ、あの人らを天守に行くのを食い止めなあかんとしたらどこで食い止める?」
そんなの答えは簡単だ、大手門を閉めてしまえばいいのだ。
「流石にそれは私でも分かるよ。あの門を閉じちゃえばいいんだよ。」
私はえっへんとドヤ顔で答えを伝える。
訪ちゃんは
「そやそや」
と短く言うと
「みんな小さな門を
訪ちゃんは
そうか、訪ちゃんに言われるまですっかり忘れていたけどお城って戦争のための建物なんだ。
構造が複雑になって当然なんだ・・・
私は当たり前の事なのにそんなことすっかり忘れて外観しか見ていなかった事が途端に恥ずかしくなる。
「あっ、そうか・・・そういうことなんだよね。お城を理解するにはそういうことも考えないといけないんだよね。」
テンションを落とした私を見て虎口先輩は
「そうね、少し怖くなったかしら?」
優しくそう言った。
今まで外観しか見ていなかった所を急に思い出したかのように城の荒々しい血なまぐさい部分を発見してしまい正直私は怖いと言うよりもびっくりして言葉が出てこなくなっていた。
「怖いのもそうかも知れないけど、私は外目しか見てなかったんだなと感じました。お城でウロウロと遠回りさせられたり、
戦争のための建物だとはじめから想像して見ていたらもっと違う見方ができたかもしれない。
そう思うとちょっと何も思わなさすぎたなと少し後悔していた。
「でも、格好いいとか
「はい・・・」
虎口先輩の言葉に少しは納得するが自分の学習不足にがっかりしたことは間違いないことなので私のテンションが低下したことは否めなかった。
「まあまあ、ええやん。さぐみんはまだ見習いや、聞きたいこととか疑問とかもっと私らに質問すればいいんやで。昨日は格好いいだけやったんが今日は荒々しさも感じた。より城への理解が深まってむっちゃ良いことや。」
訪ちゃんはニカッと笑った。
「もっと勉強しなくちゃね!」
「そうそう、その意気やで!」
私は訪ちゃんのニカッに元気を与えられた気がした。
「そう言えば先輩、渡櫓門って言ってましたけど、門って色々と種類があるんですか?」
元気になると色々と小さなことでも質問したいことがたくさん湧き出てきて、私は自然と先輩に投げかけていた。
「そうね近世城郭は廊下型の廊下門が多くて、廊下の部分から直接外に出入り口を設けているの。お寺とか古い城郭は楼門と言って門自体が独立した構造になっていて門の階下に入り口をお設けて階段で出入りするの。」
先輩は極力分かりやすく説明してくれているのだが楼門も廊下門も入ったことが無いので想像が追いつかない。
そのため、頭の中で理解がふわふわとしてしまうのだ。
「今度中に入ってみようや、土日やったら限定公開で多聞櫓と渡櫓門に入れるから。」
訪ちゃんは理解が追いついていない私を見かねてそう言ってくれた。
「訪の言う通りね、見ることで少しずつ理解していきましょう。楼門も今度京都の南禅寺に見に行くことにしましょう。南禅寺だと楼門の内部を有料公開しているわ。」
虎口先輩も訪ちゃんに賛意を示してくれた。
「お城って奥が深いんですね・・・」
「そやなあ、未だ行く度に新しい発見があるもんな。」
訪ちゃんは頭を支えるように後ろ手を組むと感慨深げにそう言った。
「私も昨日からずっと新しい発見を繰り返しているよ。」
「じゃあこれからは毎日が発見ばっかりね。」
虎口先輩が何気なくそう言った。
毎日が発見ばかり、そう考えると私は次の発見が楽しみで胸が高鳴るのを感じた。
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